日曜に想う
「赤狩り」旋風が吹き荒れていた1951年の米国で奇妙な実験があった。
大学の教室に集めた7人から9人の学生に2枚のカードを見せる。1枚目には直線が1本、2枚目には長短の異なる3本が並んで描かれている。このうち1本だけが1枚目の直線と同じ長さだ。
学生たちは、その1本が3本の中のどれかと問われる。長短はかなりはっきりしている。ふつうならまちがえる率は1%に届かない。
だが、グループの学生のほとんどが「サクラ」で本当の被験者が1人だけだとどうなるか。「サクラ」は事前に指示されたとおり同じ誤った答えを口にする。そのときただ1人事情を知らない学生の反応は?
多数派に引きずられて答えを誤る率が36・8%に上った。だれも同調を強制していないし、答えが違っても罰則はないにもかかわらず、である。
社会の多数派の声がどれほど個人の判断に影響するか。それを考えるために、心理学者のソロモン・アッシュ博士が行った有名な実験だ。
55年の米科学誌に掲載された博士の報告によると、多数派への同調の理由は一様ではない。自分がまちがっていると信じた人もいれば、全体の和を乱すのを恐れた人もいたらしい。自分に欠陥があると思い込み、それを隠そうとした例もあったという。
コミュニケーション技術が発達…