日立製作所が笠戸事業所(山口県下松市)で働くフィリピン人技能実習生に実習途中で解雇を通告し、実習生側と賃金補償で大枠合意したことについて、経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は24日の定例記者会見で、「不適正なものはないという認識でやっていたところが、不適正だと言われて困ったなと。雇用には責任が伴うから、解雇通告を出したが、このくらい(の補償)は、と決めたのだと思う」と述べた。
鉄道車両を製造している笠戸事業所は、実習生に目的の技能が学べない作業をさせている疑いがあり、技能実習制度を所管する法務省や国の監督機関「外国人技能実習機構」の検査を受けた。中西氏は、賃金補償に応じたのは雇用主としての責任からであり、不適正な実習をさせていたかどうかとは「全然ちがう次元の判断」だと強調。「(実習生に)一生補償するわけではないが、それ相応の折衝をして決めたと思う」と説明した。
中西氏は9日の経団連の定例会見では「適法うんぬんのことはいっさいまだ結論が出ていない」「違法性はいま現在、ないと信じている」と述べていた。法務省や実習機構は、日立に対して改善を求める処分を検討しており、国側が実習の適否をどう判断するかが注目される。
笠戸事業所では、3年間の実習のため昨年7~8月に入国した実習生ら40人が今年9~10月に解雇を通告された。日立は、実習機構から2年目以降の実習計画の認定を得られず、「出入国管理法により就労が認められないため解雇とし、一時的に雇用契約を終了した」(広報)と説明している。
実習生らは不当解雇だと主張し、個人で加盟できる労働組合に入り、十分な賃金補償などを求めて日立と団体交渉を重ねてきた。日立が19日の団交で、国側から実習中止の処分を受けた場合、残りの実習期間約2年分の基本賃金を補償する考えを示し、実習生側と大枠合意した。
一方、政府が進める外国人労働者の受け入れ拡大策について、中西氏は24日の会見で「経団連の意見を相当反映した方向で、決めていっていただいている」と評価。この日始まった臨時国会で出入国管理法(入管法)改正案が成立し、来年4月から外国人の新たな在留資格が導入されることに期待を示した。
日立などの大企業でも技能実習制度をめぐるトラブルが相次ぐなか、新在留資格を導入するのは拙速ではないかとの質問には、「拙速だと思わない。半年かけて議論すればよいのでは」「制度は仮説を立ててつくって、試して、直していく。そのぐらいのスピードでやらないと日本は変わっていかない」と反論した。(内藤尚志)