卓球の新リーグ「Tリーグ」が24日、開幕する。男子の水谷隼、張本智和、女子の石川佳純、平野美宇らトップ選手が集う。2020年東京五輪に向けた選手強化と、競技の裾野拡大が二本柱だ。
男女8チーム、予算規模は2億円
開幕戦(男子24日、女子25日)の舞台は東京・国技館だ。「いつか卓球が国技と呼ばれるスポーツに」。松下浩二チェアマンは23日の会見で、夢を語った。
コートに立つ選手や監督にも、特別な思いがある。男子の開幕カードは「木下マイスター東京」と「T.T彩たま」。木下に所属する水谷、彩たまの坂本竜介監督、選手兼コーチの岸川聖也は感慨深げに言う。「日本にも卓球の裾野が広がるきっかけができた」
松下氏や水谷らには共通の源流がある。ドイツリーグ1部のボルシア・デュッセルドルフだ。1993年に日本人初のプロ選手となった松下氏は、現役時代にプレー。水谷や岸川らは2000年代初頭に卓球留学にいった。
1961年創立。デュッセルドルフの中心部から路面電車で約20分の場所にある拠点には、1100人収容のアリーナ、クラブハウス、30室規模のホテルがある。モットーは「全ての人に卓球を」。ドイツ代表が練習に使うこともあれば、会員のお年寄りが趣味で卓球台を囲むこともある。
「地域密着のチームが、日本にもあったら」。松下氏らはずっと思っていた。2008年、北京五輪でメダルなしに終わると、日本でも「プロリーグが必要ではないか」との議論が始まった。曲折を経て、16年12月にプロアマ混合のTリーグ創設が日本協会の理事会で承認された。
今年2月、男女計8チームが決定。水谷、張本、石川、平野ら日本のトップ選手が参戦を表明した。海外勢も昨年の世界選手権男子シングルス3位の李尚洙(韓)、ロンドン五輪女子シングルス3位のフェン・ティアンウェイ(シンガポール)ら実力者がそろった。各チームの予算規模も2億円程度で、ボルシア・デュッセルドルフ並みだ。
これまで日本のトップ選手を生で観戦できるのは、1月の全日本選手権などに限られていた。選手も、水谷が昨季までロシアリーグに参戦していたように、実力を上げるには海外のリーグを転戦しなければならなかった。「Tリーグは選手にもファンにも、メリットがある」と松下氏は語る。
女王は不参加
課題もある。「全てがゼロからのスタートだった」と松下氏が認める通り、開幕直前まで準備がばたつく。開幕1カ月を切っても、参戦選手が発表できないチームもあった。リーグのスポンサー集めなども、時間を要した。
各チームには「直近2年で世界ランク10位以内の選手を最低1人入れる」というルールを設けた。だが、リオデジャネイロ五輪女子2冠の丁寧ら中国トップ選手との参戦交渉は、折り合いが付かなかった。日本勢も、東京五輪の代表選考のため、世界ランクを上げるのに必要なワールドツアーに転戦しなければならず、過密スケジュールになる。全日本女王の伊藤美誠は、参戦を見送った。
それでも、この時期の開幕にこだわったのは、東京五輪後の卓球界を見通して種をまきたかったからだ。「3歳からお年寄りまで、誰もが楽しめるのが卓球の魅力。東京五輪を見て興味を持った人の受け皿に、Tリーグがなりたい。開幕から3年が勝負だ」と松下氏は力を込める。
各チームは、子ども向けの卓球スクールや地域貢献の活動が義務づけられる。「T.T彩たま」はすでにさいたま市など3市や県と協定を結んだり、卓球教室を開いたりと積極的だ。坂本監督は「将来的にはボルシア・デュッセルドルフのように自前の施設を持ち、地域に根ざした活動がしたい。環境が整えば、中国のトップ選手も加入する可能性が高まる」と語る。
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Tリーグの主な特徴
・男女各4チームが参加。来年2月まで、7回戦総当たりで各チーム21試合を実施。勝ち点上位2チームが3月のファイナルに進出
・各チームは6人以上で構成。直近2年以内に世界ランク10位以内に入った選手を最低1人は入れる
・試合方式は団体戦。第1試合(ダブルス)は3ゲーム制、第2~第4試合(シングルス)は5ゲーム制。2―2の場合は延長戦(シングルスで1ゲーム)を実施
・各試合の最終ゲームは6―6から開始
・サーブは審判が得点をコールしてから20秒以内に
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Tリーグのチームと主な選手
【男子】
木下マイスター(東京都) 張本智和⑧、水谷隼⑫
T.T彩たま(さいたま市) 黄鎮廷⑨(香港)、吉村真晴(27)
岡山リベッツ(岡山県) 李尚洙⑦(韓国)、上田仁(37)
琉球アスティーダ(沖縄県) 丹羽孝希⑩、荘智淵⑬(台湾)
【女子】
木下アビエル(神奈川県) 石川佳純④、長崎美柚(39)
トップ名古屋(名古屋市) 鄭怡静⑦(台湾)、徐孝元⑫(韓国)
日本生命(大阪府) 平野美宇⑨、早田ひな(31)
日本ペイント(大阪市) フェン・ティアンウェイ⑪(シンガポール)、 加藤美優(25)
※丸数字は10月の世界ランク