一定以上の給料をもらって働く高齢者の年金額を減らす今の仕組みは見直すべきか――。
2日の社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の部会で、こんな議論があった。政府が「生涯現役社会」を目指して高齢者雇用の促進に力を入れるなか、年金制度を見直す際の論点となりそうだ。
部会で議論されたのは、「在職老齢年金」のあり方だ。現在は、60~64歳の場合は給与と年金の合計額が月28万円以上、65歳以上の場合は月46万円以上になると、年金額が減らされる。
特に課題となっているのが、65歳以上への対応。60~64歳について、在職老齢年金の減額問題は2030年には消滅することが決まっているからだ。
2日の部会では、複数の委員が65歳以上の減額ルール自体をなくしたり、収入の条件を引き上げたりすることを提案した。「見直しはシニアの就労を後押しする政府の方向性に沿う」との考えからだ。
一方、厚労省は、減額をやめると年金の支払いが年約4千億円増えるとの試算を示した。「将来世代の年金を取り崩すことになる」との慎重論を唱える委員もいて、結論は持ち越された。
厚労省は来年、年金財政の定期健診にあたる「財政検証」を行う。その結果を踏まえて年金制度見直しの議論を本格化し、20年にも制度変更の法案を国会に提出する考えだ。(佐藤啓介)