安倍晋三首相は14日、東京都内の日本記者クラブであった自民党総裁選の討論会で、年金の受給開始年齢について70歳を超える選択もできる制度改正を検討し、「3年で断行したい」と述べた。日本銀行の金融緩和策については「ずっとやっていいとは全く思っていない」と述べ、3選後の任期中をメドとする「出口」に言及した。
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年金の受給開始年齢は原則65歳。現行では、繰り下げ受給すると毎回の受給額は増え、70歳まで遅らせることができる。今年2月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」は、これを70歳を超えても選択できるよう検討を求めており、首相は「生涯現役であれば、70歳を超えても受給開始年齢を選択可能にしていく。そういう仕組みづくりを3年で断行したい」と述べた。
選択制を広げる理由について首相は「高齢者がいくつになっても生きがいを持って活躍できる生涯現役社会を実現する」と強調した。高齢者になるべく長く働き続けてもらい少子高齢化を乗り切るのが狙いだが、現行制度でも66歳以降に遅らせているのは1%ほど。どこまでニーズがあるかは不透明だ。
また、首相は「評価や報酬体系を整備して、65歳以上の雇用が継続されることが可能な仕組み」をめざす考えも示した。予防に重点を置いた医療費抑制策などに取り組み「3年間で社会保障のあり方の改革を行っていきたい」とも語った。
アベノミクスの中核である日銀による異次元の金融緩和については、為替や雇用で効果が出ていると強調した上で「ずっとやっていいとはまったく思っていない」と指摘。金融緩和を縮小する「出口」に向けて「経済が成長してきている中で、なんとか私の任期のうちにやり遂げたい」と語った。
ただ、具体的な手法については「どのように終えていくか、今、私が言えばただちに市場が反応する」と言及を避け、緩和の判断は日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁に任せるとした。来年10月の消費税率10%への引き上げについては「予定通り」と明言した。
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〈年金の受給開始年齢〉 いまは原則65歳で、60歳から70歳の間で選べる。66歳以降への繰り下げを選択した場合は、1カ月ごとに毎回の受給額は0・7%ずつ増え、1年遅くすると8・4%増。70歳からにすると42・0%増える。基礎年金や厚生年金だけを繰り下げる選択もできる。
逆に65歳になる前に繰り上げると、1カ月早めるごとに0・5%減り、1年間で6%減る。60歳から受給した場合は、65歳から受給するより受給額が30%減ることになる。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会で4月、支給開始年齢を68歳に引き上げる概念図が示されたが、討論会での言及はなかった。首相案は選択できる年齢を引き上げるもので、財政審の検討とは別内容だ。