日立製作所の20代の男性社員が出向先の子会社で精神疾患を発症したのは、月100時間を超す時間外労働とパワーハラスメント(パワハラ)が原因だとして、高岡労働基準監督署(富山県高岡市)が労災認定した。個人加入の労働組合「労災ユニオン」と男性が6日、記者会見して明らかにした。認定は1月16日付。男性の体調の改善を待って会見を開いたという。
男性は2013年に日立製作所に入社。15年6月から子会社の日立プラントサービス(東京)に出向し、富山県内の化学プラント建設現場で施工管理の監督業務に従事した。
男性によると、約200人が働く工事現場で、監督業務は上司や同僚と10人前後で担当。だが、一番年下だったため、作業状況の把握、来客対応、事務用品の発注、弁当の準備、電話番など多くの仕事を任され、午前7時半から午後10時過ぎまで働くことが多く、土曜日も出勤した。
出向翌月の残業を手元の記録通りに約170時間と社内システムに入力し、自己申告した。しかし後日、上司から「人事部に怒られるから、こうつけないでくれ。考えてつけろ」と他の同僚もいる前で指示されたという。
その後、同じ上司から「辞めちまえ」「しょうもない仕事しかしていないのに、残業をつけやがって」などと怒鳴られる日々が続いたという。男性は次第に不眠や味覚の異常などを感じるようになり、精神科の医療機関を受診。同年11月に適応障害を発症したと診断された。
男性によると、こうした長時間労働やパワハラについて、職場の産業医に面談して改善を求めたが、その後も目立って状況は変わらなかったという。「会社は多くの従業員が苦しんでいるのを知っているはず。見て見ぬふりをせずに、そういう働き方をやめさせてほしい」と語った。男性は16年2月から今まで休職している。
会見で示した労基署の労災認定の書類などによると、発症前の5カ月のうち4カ月で、月の時間外労働が「過労死ライン」とされる100時間を超え、最長で161時間だった。出向1カ月後に上司に座るいすを蹴り飛ばされたり、激しく叱責(しっせき)されたりしたと認定。これらが適応障害の発症につながったと結論づけた。
日立製作所の広報・IR部は取材に対し、「労災認定を重く受け止め、引き続き、従業員の健康管理を徹底してまいります」とコメントした。男性に残業時間の過少申告を促す指示があったかどうかは「回答を差し控える」とした。(滝沢卓)