中部電力は、トヨタ自動車が再生可能エネルギーの普及をめざして設立したファンドに参画する。大口取引先であるトヨタとの結びつきを強めるほか、エコ発電された電気の取り扱いを増やすことで、ほかの電力会社との差別化をはかる。
中部電が参画するのは、トヨタと独立系投資会社のスパークス・グループが9月に構想を示した「未来再エネファンド」。
今回の出資は、お互いに愛知県内に拠点を持つことからトヨタ側が呼びかけたといい、中部電が出資を前提に金額を調整している。トヨタは東北や九州にも工場を構えており、東北電力や九州電力も出資する可能性がある。
中部電のねらいは、トヨタとの関係を維持し、強めることだ。
トヨタは工場で車をつくるときに出る二酸化炭素を2050年までにゼロにするという目標を立て、太陽光や風力、水素由来の電気を使う方針を示している。一方、中部電は再エネを「供給の柱」と位置づけて自前でも増やす方針だが、ファンドを通じて再エネの電源をさらに増やす。「販売する電気にも組み込みたい」(幹部)としており、そこで調達した電気をトヨタに売ることも検討する。
発電時に二酸化炭素を出さない電気をめぐっては、原子力発電所を再稼働した関西電力が、電気の「安さ」も武器に攻勢をかけている。中部電は浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働が見通せておらず、二酸化炭素の多い石炭火力を動かしていることも逆風となった。他社との競争に勝つためにも再エネ電源に力を入れ、「エコ」を重視する姿勢をアピールしていく。(山本知弘、初見翔)
メガ2行も参加
中部電力が出資する投資ファンドに三井住友銀行、みずほ銀行も加わる。個別の出資額は非公表だが、トヨタの100億円と合わせて合計236億円で運用を始めるという。