シェアハウス融資で多数の不正が発覚したスルガ銀行(静岡県沼津市)は12日、一連の融資不正問題で同行の信用を失墜させ、多額の損失を招いたなどとして、創業家出身の岡野光喜前会長兼最高経営責任者(CEO)ら現・旧経営陣の計9人に対して総額35億円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こした。元首脳らの責任追及のため、銀行本体が提訴する異例の事態となった。
請求額は、岡野前会長と、実弟の故・岡野喜之助元副社長に対しては連帯して35億円、米山明広前社長ら現・旧取締役6人と元執行役員1人に対しては連帯して11億円を求める。
経営陣の法的責任をめぐっては9月14日付で同行に設置された「取締役等責任調査委員会」(委員長=小沢徹夫弁護士)が調査。9日に銀行へ提出された報告書では、岡野前会長について「(シェアハウスローンの実行を差し止める)義務を怠った点について、監視監督義務違反が認められる」とするなど、訴訟の対象となった9人がいずれも、ローンの問題性に気づきながら必要な措置を取らなかったと認定した。
一方で、役員のうち、現社長の有国三知男氏(問題当時は取締役)や、現旧社外取締役3人は義務違反などはなかったとされた。
また、現旧監査役についても、「監査役としての義務違反は認められない」として損害賠償を求めないことも決めた。(柴田秀並)
スルガ銀による旧経営陣らへの損害賠償請求額
請求総額は35億円
・岡野光喜氏(前会長)、岡野喜之助氏(故人、元副社長、請求対象は相続人)に対しては連帯して35億円
・米山明広氏(前社長)、白井稔彦氏(前専務)、望月和也氏(前専務)、岡崎吉弘氏(元専務)、柳沢昇昭氏(前常務)、八木健氏(取締役)、麻生治雄氏(元専務執行役員)に対しては連帯して11億円