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止まらぬ石炭火力発電 「事業者はリスクに気付いて」

作者:佚名  来源:本站原创   更新:2018-10-11 17:43:51  点击:  切换到繁體中文

 

エネルギーを語ろう


温室効果ガスの巨大発生源となる石炭火力発電所。じつは日本国内で石炭火力発電所の建設ラッシュが起きています。早急に歯止めをかけるべきだと訴える環境NGO「気候ネットワーク」の東京事務所長・桃井貴子さんにその問題点を聞きました。



建設ラッシュ いまも続く


――石炭火力発電所の建設は日本でどのぐらい進められているのですか。


「私たちが把握しているものとしては、東日本大震災の翌年の2012年から今年9月末までの期間で、計50基・約2300万キロワット超もの計画があります。このうち、すでに稼働したのが8基、建設中が15基です。一方、地元の反対などで中止されたのは7基。残りの20基ですが、環境への影響を予測・評価する環境アセスを終えたのが5基、環境アセスを進めているのが12基、不明が3基となっています」


――なぜ、そんなに多くの石炭火力の計画が持ち上がったのでしょうか。


「震災後、原発が止まった東京電力は、火力発電所を増強する方針をとりました。その発電事業者に対する入札で、東電が低い上限価格を設定したことが大きな契機になったと考えています。上限価格が低いと、安い燃料価格の石炭火力でなければ落札できないのです。折しも電力の小売りが自由化され、安い電源としての石炭火力が求められたため、それこそ堰(せき)を切ったかのように石炭火力の建設計画が増えていったのです」


「とくに問題なのが小規模の石炭火力発電所の計画です。環境アセスの対象は11.25万キロワット以上なのですが、50基のうち20基近くが、11.2万キロワットの計画です。まさに『アセス逃れ』で、数年かかるアセスのプロセスが省け、すごい速いスピードで建設が進みつつあります」


クリーンになったのでは?


――経済産業省は「日本の石炭火力は非常にクリーンになった」としてます。


「たしかに窒素酸化物や硫黄酸化物などの排出濃度は昔の石炭火力に比べ小さくなっていますが、石炭はそもそも炭素の含有量が多いので、どんなに高効率にしても大量の二酸化炭素が出てしまいます。最新式の石炭火力でも、その排出量は天然ガス(LNG)火力のほぼ倍です。だからこそ、温暖化対策では、まっさきに石炭火力を止めていくべきなのです」


「石炭火力は窒素酸化物の排出量もLNG火力の倍以上です。設備容量の大型化も進み、周辺地域での健康被害のリスクをぬぐえません。有害な微小粒子状物質(PM2・5)の発生調査も必要です」


――でも、安い石炭火力なら、私たちの電気代も安くなるのではないですか。


「一時の値段の安さだけで判断できないと考えます。石炭火力が排出する二酸化炭素が気候変動の要因となって異常気象を招き、さまざまな害をもたらします。それに対して社会的に支払うコストが今までないぐらいに積み上がっていく。そうした事態を考えたとき、石炭火力は本当に安いと言えるのでしょうか」


――二酸化炭素の排出を抑制する手立てはどんなものがありますか。


「世界を見渡せば、排出に伴う社会的なコストを値段に反映させる『カーボンプライシング(炭素の価格化)』を多くの先進国が導入しています。その手法の一つ『炭素税』は、環境省の資料(


https://www.env.go.jp/policy/tax/misc_jokyo/attach/intro_situation.pdf



)によると、スイスは日本円で9860円(二酸化炭素排出1トン当たり)、スウェーデンは1万5670円をかけています。日本は地球温暖化対策税の名ですが289円で、税率の低さが際立っています」


京都議定書の後も建ててきた


――温室効果ガスの排出削減を求めた1997年の京都議定書は日本で結ばれたのに、その日本が巨大排出源の石炭火力に歯止めをかけられなかったと。


「ええ、京都議定書の後も、石炭の利用に政策の手が入らず、『安い燃料』のまま放置されてきました。それが石炭を火力発電の燃料とするインセンティブ(動機づけ)になっていたのです。このため、石炭利用は一貫して増え続け、震災前、石炭火力は100基以上を数え、全設備容量は約4200万キロワットになっていました。京都議定書の翌年の98年に比べ約6割増です。震災後、そこにさらに50基の計画が持ち上がったのです。震災のどさくさに紛れてという感じです」


「残念ながら、気候変動のリスクに対する日本政府の認識が決定的に甘いと言わざるをえません。エネルギー政策や気候対策が電力をはじめ既存の業界に配慮した形になっているのです。京都議定書から20年、まったく変わらなかったと言っていいぐらいです」


――産業界には、石炭火力のプラント輸出に期待をかける声もあります。


「最新型の石炭火力でも二酸化炭素の排出量は大きいのですが、私たちが海外に輸出されたプラントを調べたところ、最新型でない性能レベルの劣ったものが大半でした。これには海外のNGOなどからも強い批判の声が上がっています。日本の温暖化対策に対する国際的評価は本当に低い。有力な環境NGOが発表する国別ランキングでは、ここ数年、いつも下から数番目の最悪レベルのところにいます」


世界で強まる「脱炭素」の動き


――世界はどう動いているのでしょうか。16年に発効した地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」では、今世紀後半に温室効果ガス排出の実質ゼロをめざしています。


「英国やフランス、カナダは、パリ協定をふまえて、石炭火力の稼働を遅くとも2030年までにゼロにする方針を打ち出しました。それに対して、安倍政権は2030年度の電源構成で打ち出した石炭火力26%という数字を変えようとしません。パリ協定に逆行していますし、原発と石炭火力を一緒にして『ベースロード電源』とした位置づけは、国際社会からみれば非常識と言わざるを得ません」


「世界では、いま、英語で『インベスト(投資)』の反対の意味の『ダイベストメント』という動きが広がっています。機関投資家らが石炭火力など化石燃料に関連する企業から投資を引きあげるものです。日本でもようやくメガバンクが石炭火力建設への融資に慎重な姿勢を取り始めたところですが、その実態はまだ中途半端ですね」


石炭火力のリスクに気付いて


「今後、省エネが進んで、再生可能エネルギーが大量に入ってくると、石炭火力の稼働率が下がり、投資が回収できない『座礁資産(ストランデッドアセット)』になることも考えられます。石炭火力の計画を進める事業者にこそ、そのリスクに気付いてほしいのです」


――それにしても今年の夏は、日本も「異常気象」に見舞われました。


「しばらく前、台風の大型化や豪雨被害が増えるといった予想がありましたが、私たちはこの夏、『それが本当に来た』と実感したのではないでしょうか。気候変動を抑えるために温室効果ガスの排出を本当にゼロにする覚悟を決め、経済や社会のシステムを、それに合った形に一刻も早く移行させていかないといけません」



桃井 貴子(ももい・たかこ) 大学在学中から環境保護活動に取り組む。卒業後は、環境NGO「ストップ・フロン全国連絡会」のスタッフとして、市民主導の「フロン回収・破壊法」の制定に尽力。その後、衆議院議員秘書、「全国地球温暖化防止活動推進センター」職員を経て、2008年に環境NGO「気候ネットワーク」の専従スタッフ。13年から東京事務所長。



石炭火力の問題点についての桃井さんの話をさらに深く・広く展開した形の小冊子「石炭火力発電Q&A 『脱石炭』は世界の流れ/気候ネットワーク編)」が「かもがわ出版」から発売されました。「原発も温暖化もない自然エネルギー100%の未来へ!」をうたっています。1千円(税別)。



電力やエネルギーの姿が国内外で大きく変わりつつあります。何が起きていて、どこに向かうのか。「エネルギーを語ろう」では、さまざまな識者へのインタビューを通じて、その行く先を探ります。(聞き手=小森敦司)



 

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