日本や米国、中国など21カ国・地域が参加し、パプアニューギニアで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が18日、閉幕した。会議では米中が互いの通商政策をめぐって対立し、首脳宣言の採択を断念する異例の事態となった。首脳宣言が採択されなかったのは、第1回の首脳会議が開かれた1993年以降で初めて。代わりに議長国のパプアニューギニアが議長声明を発表することになった。
関係者によると、米国は会議で、中国が国有企業に巨額の補助金を出していることや、国外の企業に技術移転を強要していることを批判。中国を念頭に、共通の貿易ルールを定める世界貿易機関(WTO)を改革する必要性を宣言に盛り込むよう提案した。
これに中国が反発。米国を念頭に保護主義や単独主義的な動きを批判するとともに、米国の提案に反対した。反対はほかの国からもあったとみられ、パプアニューギニアも調整しきれなかった。
15日に開かれたAPEC閣僚会議でも、米中双方は互いの批判を展開した。閣僚声明の調整は難航し、発表されていない。17日には習近平(シーチンピン)国家主席とペンス副大統領がそれぞれ現地で演説し、貿易紛争や地域構想で応酬を繰り広げるなど、米中の対立が会合全体に影を落とした。
首脳会議に参加した安倍晋三首相は「世界中で保護主義による貿易制限的措置の応酬が広がっている」との懸念を示したが、対立を解く役割は果たせなかった。首相は会議閉幕を待たず、帰国の途に就いた。
米中両国は11月末からアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた首脳会談で対立を和らげる道筋を描くが、双方の主張の隔たりが浮き彫りになっている。(ポートモレスビー=西山明宏)