売上高1兆円以上の企業の社長報酬総額の「中央値」は9855万円で、前年から5・0%増えたと、三井住友信託銀行とデロイトトーマツコンサルティングが20日発表した。好調な企業業績を背景に2002年の調査開始以来、最高に達した。ただ、経営トップの裁量によらず、客観的に報酬を決める仕組みがまだ不十分だという課題もある。
調査は国内の659社を対象に昨年の実績を調べた。社長報酬は08年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災後は減少したが、13年からの円安・株高傾向が追い風となり、増加が続いている。あしもとの業績を報酬に反映させる「業績連動型」企業が7割に達したことも報酬増につながった。
ただ欧米と比べると日本企業の社長報酬は低い。時価総額の高い企業を対象に米英独仏4カ国の社長報酬を調べたところ、米国の中央値は16億8202万円と日本の17倍。4カ国で最も低いフランスでも3億3632万円だった。
一方、報酬を決めるプロセスの透明性が確保されているとはいえない。社外取締役などで構成する報酬委員会の設置は調査対象の40%、260社にとどまった。委員会の開催は年1~2度が55%と過半を占め、形式的な議論にとどまっている可能性もある。村中靖デロイトトーマツコンサルティング執行役員は「社長を含まない報酬委員会を設けなければ、(報酬の)客観性は損なわれる」と指摘した。
19日逮捕された日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者は、欧米並みの「高額文化」を持ち込んだ。日産では、役員の報酬は事実上、ゴーン会長に決定権があった問題も指摘される。(福山亜希)