東日本大震災の仮設住宅購入をかたった特殊詐欺事件の犯行グループの関係先から、被害金とみられる約3億円が押収された。特殊詐欺被害で犯行グループから多額の金銭を取り戻すことができたのは異例で、大阪地検が被害者に返還する手続きを進めている。
地検などによると、東日本大震災の被災地での仮設住宅購入のためとして名義貸しを依頼した後、現金を要求する手口で、大阪府や東京都などの16人から計3億4200万円を詐取したもの。2017年9月までに犯行グループ11人が組織犯罪処罰法違反罪で有罪が確定している。
捜査の過程で、大阪府警が犯行グループの関係者名義のトランクルームに保管されていた2億9801万円を押収。府警幹部によると、こうした特殊詐欺事件では犯行グループがだまし取った金を隠してしまうため被害回復が難しく、多額の現金が見つかるのは「かなりまれ」(同幹部)だ。
地検は組織的な詐欺事件などによる犯罪収益を没収し、被害額に応じて被害者に給付できる「被害回復給付金支給制度」に基づき、今年7~9月にホームページで、他に押収された現金も加えて3億4200万円の給付を告知。裁判で認定されなかった余罪の被害者も受給資格があり、28人(先月29日時点)が申請したが、地検は未申請の被害者がいるとみている。
正式な申請期限は過ぎたが、被害者の権利や利益を守る「特定非常災害」に指定された西日本豪雨で被災した広島や岡山、愛媛県などの被害者は今月末まで申請できる。(一色涼、米田優人)