大阪地検特捜部は29日、株式公開買い付け(TOB)をめぐるインサイダー取引に関与したとして、SMBC日興証券の元社員ら2人を金融商品取引法違反の疑いで逮捕し、発表した。特捜部は認否を明らかにしていない。
逮捕されたのは、同社元社員鈴木直也容疑者(30)=奈良県大和郡山市=と知人で無職の山脇達也容疑者(30)=大阪市北区。
特捜部などによると、鈴木容疑者は2016年7月、オフィス家具製造販売のイトーキが子会社ダルトン株のTOBを行うことを決めたとする未公開情報を山脇容疑者に伝え、山脇容疑者が同年8月3日までに同社の計29万6千株を約5326万円(1株約180円)で買い付けた疑いがある。鈴木容疑者は17年3月に退職している。
開示資料によると、イトーキが16年8月4日からTOBを実施し、同年10月までにダルトンの463万株(1株240円)を買い付けた。ダルトンは17年1月に上場廃止している。SMBC日興証券はこのTOBでフィナンシャルアドバイザーを務めていた。
同社の清水喜彦社長は29日に東京都内で記者会見し、「関係者の方々に多大なご心配、ご迷惑をおかけしていることを心よりおわびする。証券会社として信用を著しく損なうことで、非常に重く受け止めている」と謝罪した。(一色涼、多鹿ちなみ)