横田基地(東京都福生市など)の周辺住民らが、騒音被害を理由に国を訴えた訴訟の判決が30日、東京地裁立川支部であった。見米(みこめ)正裁判長は過去分に限って被害を認め、国に総額約9500万円の賠償を命じた。住民が求めていた、将来分の賠償や、自衛隊機と米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めの訴えは退けた。
見米裁判長は「裁判所が繰り返し、騒音被害の慰謝料の支払いを国に求めてきたにもかかわらず、米国と国は抜本的な被害防止対策を講じず、被害を漫然と放置してきた」と指摘した。
横田基地をめぐる訴訟は繰り返し起こされており、今回は第9次訴訟。東京都と埼玉県の6市1町に住む144人が「激しい騒音にさらされ、平和に生きる権利が侵害された」などとして2012~14年、提訴した。見米裁判長らは昨年9月に現地を訪れ、騒音や飛行状況を検証していた。
判決は、騒音によって睡眠や会話が妨害されているほか、「病気が発症するかもしれない」といった不安感も被害にあたると認定。航空機の騒音基準「うるささ指数(W値)」75以上の住民について「受忍限度を超える騒音被害が生じている」とし、騒音レベルに応じて月4千~1万2千円の賠償を認めた。75未満の住民については「騒音にさらされた状況が明らかではない」として認めなかった。
原告側は「騒音被害は半永久的に続くと予想され、何度も提訴しなければならない原告の負担は大きい」として将来分の賠償も求めていたが、判決は「将来判断すべきで、提訴する権利がない」として却下した。
午後7時から午前8時の間の米軍機と自衛隊機の飛行差し止めについては、「自衛隊機の飛行差し止めは民事訴訟では請求できない」という最高裁判決や、「日本政府は米軍の活動を制約する権利はない」という法理論を挙げて退けた。(滝口信之、岡本玄)