政府は12月に改定する「防衛計画の大綱」(防衛大綱)で焦点の一つになっている「サイバー攻撃能力」について、保有の可能性を検討することを盛り込む方向で最終調整に入った。軍隊の情報通信ネットワークへの依存度が増大していることを踏まえ、「サイバー空間は現代戦を遂行する上で死活的に重要」とし、態勢強化をめざす。
防衛省は30日、防衛大綱に関する与党のワーキングチームの会合で「領域横断作戦(クロス・ドメイン・オペレーション)」と題した文書を配布。防衛大綱で焦点になっている「サイバー」「宇宙」「電磁波」をめぐる課題や今後の取り組みなどを説明した。
その中で、サイバー能力を強化する必要性を強調。サイバー防衛隊などの拡充とともに、「相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力の保有の可能性について検討」とした。また、高度な技能をもつ外部の人材の活用のほか、関係機関や企業、米国などとの連携強化の必要性も指摘した。
サイバー攻撃をめぐっては、自民党が「サイバー攻撃能力の保有」を検討するよう政府に提言していた。目標のサイトやサーバーに大量のデータを送り、機能を停止させる「DDoS(分散型サービス妨害)攻撃」などが想定されている。
ただ、サイバー攻撃については、発信元の特定が難しいことや法的整理が課題になっている。30日のワーキングチームでもサイバーや宇宙などの新領域で自衛権の行使としてサイバー反撃ができる条件について議論が集中したという。(藤原慎一)