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零下20度…でも薪買えぬ子 「忘れられた戦争」を歩く

「外で遊びたい」「もっとお父さんに会いたい」


18歳の娘は過激派に仕立てられた…父が訴える国家の恥


「夢は何?」という問いに、子どもたちが口にしたのは、ごくふつうの日常生活だった。ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との間の紛争が4年以上続くウクライナ東部を今夏、日本ユニセフ協会の視察に同行して訪れた。「忘れられた戦争」とも呼ばれる紛争は11月に入り、再び緊張が高まっている。子どもたちのささやかな願いがかなえられる日はくるのだろうか。


ミーシャ君(10)の誕生日プレゼントは、母親のルボフ・シガヤバさん(30)がやっとのことで手に入れた、オレンジ2個だった。


「僕はバナナとオレンジが好きだから」とミーシャ君ははにかむ。


ウクライナ東部のマリンカにあるミーシャ君の自宅は、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力が戦闘を続ける最前線にある。2014年以降、激しい砲撃で近くの家々は壊され、ほとんどの住民が避難した。


だが、ミーシャ君は、地雷原が広がり、いまも砲弾が飛び交う場所で暮らす。父親が姿をくらまし、母親のルボフさんに仕事はない。母子家庭に支払われるわずかな手当だけが頼りの生活で、逃げることができないという。


3年前からは電気が止まり、零下20度以下になる冬は人道援助によって配られる石炭を使って暖をとる。薪を買う金もなく、ミーシャ君は学校の帰り道に、折れた木々を拾う。


2015年8月には砲弾が庭に落ち、頭に大けがをして2回も手術をした。「もしかするとまだ頭に小さな破片が入っているかもしれない。でも、いまは以前と同じようにサッカーもできるよ」とミーシャ君。「いまも続く砲撃は怖くないの?」と聞くと、「もう慣れた。砲撃があったら、一目散に家に戻って、窓を閉めてお母さんの横に行くんだ」と話した。母親のルボフさんと一緒の写真を撮りたいと伝えると、「お母さんは写真を撮られるのは嫌いだから。僕ひとりで」と堂々と答えた。


ミーシャ君に洋服を提供するなど援助しているマリンカ第2学校のルドミラ・パンチェンコ校長(37)は「彼は、10歳という年に似つかわしくないほど聡明(そうめい)だ。家では唯一の男だから、お母さんを助け、守ろうとしている」。


戦争は子どもたちから、「子どもらしく生きる時間」を奪う。3年前は砲撃が激しく、子どもたちは学校でもほぼ毎日、地下の防空壕(ぼうくうごう)に避難しなくてはならなかった。最近は昼間の砲撃がほとんどないが、夜になると砲撃音が鳴り響く。


防空壕への避難訓練に参加したエカチェリーナさん(11)は「友だちと外で遊びたい」。アリサさん(11)も「夜に友だちと家を訪ね合って、一緒に過ごしたい」。真っ暗な地下で2人はささやかな夢を話した。


一見、元気そうに見える子ども…


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