師走の歌舞伎の顔見世(かおみせ)興行(京都・南座)で、上方歌舞伎の名門、松嶋屋の親子孫3世代が共演中だ。片岡仁左衛門と片岡孝太郎(たかたろう)、そして南座に初めて登場する18歳の片岡千之助(せんのすけ)。千之助は仁左衛門を「オーパ」と呼び、大好きなヒーローに重ねて「祖父は僕のウルトラマン。いつか近づけたら」と、その背中を追う。
京都の「顔」南座、3年ぶり復活
会見中、目尻が下がりっぱなしの仁左衛門と、どこか緊張した面持ちの孝太郎。表情こそ対照的だが、「千之助が大きな役をもらっての初共演。楽しみでもあり心配でもある」と口をそろえる。
歌舞伎の3大名作の一つ「義経千本桜」から、木(こ)の実・小金吾討死(こきんごうちじに)、すし屋の2幕を上演する。中でも木の実は、仁左衛門のいがみの権太をはじめ、3人が舞台にそろう。
千之助が演じる主馬小金吾(しゅめのこきんご)は、元服前の若侍。夫の平維盛(これもり)を捜す若葉の内侍(ないし)(孝太郎)とその幼子に連れ添い、追っ手から2人を守る。
大勢を相手にした立ち回りもあり、「強くけなげで真摯(しんし)な、格好いい役を演じられれば」と千之助。仁左衛門が横から「命がけで主を守る強い心」と付け加えると、すかさず「を持てるように頑張ります」と繕い、笑いを誘った。
仁左衛門は今回の配役を「ある意味無謀」としつつ、「荷物を背負わせないと身につかない。30キロ持てる人に60キロを持たせる。そのとき持てなくても、次は30キロを楽に持てるようになるはず」と狙いを読み解く。稽古をつけるのも仁左衛門だ。
孝太郎は「父が立ち役(男役)、私が女形なので、父がいる間にそばで感じてもらいたい。立ち役をめざした僕が出来なかったことを実現してもらいたい」とエールを送る。
南座では11月、高麗屋の3世代が共演した。千之助は「5歳も年下の(市川)染五郎君が大きい役をしているのは素晴らしいこと」と刺激を受けた様子。「祖父や父から、何もかも吸収したい」と意気込む。
26日まで。2万7千~6千円。チケットホン松竹(0570・000・489)。(岡田慶子)