自治体が担ってきた水道事業に、「民営化」という選択肢が広がる。民営化の様々な問題点が指摘される中、与党は6日、改正水道法成立へ押し切った。政府は「導入するかは自治体の判断」と説明するが、失敗した場合に不利益をこうむるのは住民だ。
6日午後の衆院本会議。反対討論で立憲民主党の初鹿明博氏は「水道事業の運営権を民間企業に譲り渡すコンセッション方式の導入は断じて認めるわけにはいかない」と訴えた。
水道などの民営化を推進する内閣府の担当部局に水道サービス大手・仏ヴェオリア社の関係者が出向していることも問題視。「利益相反が疑われる事態は明らかだ。水道事業を特定の外資系企業に譲り渡すことにつながる法案を認めるわけにはいかない」と主張した。
国民民主党の稲富修二氏は、料金高騰や水質低下などから、再公営化した失敗例が海外で増加していると指摘。厚労省が失敗事例を3件しか調べていなかったことが審議で明らかになったことも念頭に、「コンセッション方式を導入すれば民間の効率的経営が必ず導入できるというのは幻想だ。国民の生活を脅かしかねない」と批判した。
しかし、野党が指摘したこうした疑問点はほとんど解消されないまま、自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。与党は7日には出入国管理法案も採決、成立させる方針で、「数の力」を頼りに強引に通す国会運営の強硬姿勢は相変わらずだ。
菅義偉官房長官は「再公営化」の流れに反するとの指摘について、6日午後の記者会見で「官民連携はあくまで選択肢だ。自治体が活用する選択肢が増える」と反論。関係者の出向については、同日午前の記者会見で「国家公務員の服務規律を順守させている。制度上の問題はない」と一蹴した。
政権が法案を提出したのは2017年の通常国会。一度廃案になり、18年の通常国会では継続審議になっていた。注目を浴びたのは、関係者の出向や厚労省調査の件数など数々の問題点が明らかになった臨時国会終盤に入ってからだ。
それまで急いできたわけではないのに、国会終盤になって採決強行へと向かった政府与党の姿勢に対し、野党内には「世界的な再公営化の流れの中で、あえて民営化に道を開く法案。海外での契約を失った水メジャーの穴埋めのためではないか」との疑念がくすぶる。
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