福岡市南区で2016年10月、保育士の肱岡(ひじおか)綾音さん(当時28)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた無職、冨士田清治被告(49)の裁判員裁判が7日、福岡地裁であった。検察側は「更生は困難で、再犯のおそれは極めて大きい」として、無期懲役を求刑。弁護側は「やりなおすことができる人物で、早期の社会復帰を求める」と主張し、結審した。判決は19日。
検察側は論告で、ナイフによる傷の深さなどから「極めて強い殺意があった」と主張。冨士田被告が別の強盗殺人未遂事件で服役し、刑期が終わった直後の事件だったと指摘し、「被害者には何の落ち度もなく、苦痛や無念は想像を絶する。事件を起こした理由を正直に話していないなど真摯(しんし)に反省しているとは言えない」と述べた。
弁護側は最終弁論で、「目を傷つける目的で被害者の部屋に侵入し、積極的に殺そうと思っていなかった。更生する意欲は強い」と訴えた。
論告の前に、肱岡さんの母親が別室から意見陳述し、「私の心は娘と死んでしまったと感じた。どうか私の娘を返してください」と語った。父親は「極刑を求めます」と述べた。
冨士田被告は「更生できるよう日々努力してまいります」と話した。
起訴状によると、冨士田被告は16年10月15日夕方ごろ、肱岡さん方のアパートに侵入。同日午後7時15分ごろ、玄関付近で、帰宅した肱岡さんの胸をナイフで2回刺すなどして殺害したとされる。