多賀谷克彦の波聞風問
「お客様を料理で幸せにする。でも、これからの料理人は食文化の担い手として、社会の課題に向き合うことも必要になってきます」。
先日、辻調理師専門学校(辻調、大阪市)の辻芳樹校長(54)の話を聞いた。辻さんは、欧米の食の最前線を知り、和食のユネスコ無形文化遺産の登録にも尽力した。
若い料理人が向き合う課題とは。納得できる食材を持続的に手に入れるには。食材を育てる農漁業を維持できる地域を残すためには――。自然の恵みを生かして良い料理を提供しつづけることは、社会の課題を解決していくことにつながっていくと、辻さんはいう。
そして1人のフランス人シェフの名前を挙げた。仏中南部のオーブラック地方に生まれ、郷土の素材にこだわり続けるミッシェル・ブラス氏(1946年生まれ)。独学で料理を学び、シンプルで軽やかな自然派フレンチを確立した。
彼は、地元の食材から料理を創作するため、郷土の風景や食文化を守り、生産者を大事にするシェフとして知られる。そこでしか味わえない食材と料理を求め、ブラス氏のレストランには世界中から人が集まってくる。
辻調はこの夏、山形県鶴岡市に…