お坊さんが出ばやしとともに舞台へ上がり、ほとけの教えをわかりやすく10分で――。若手僧侶たちが法話(ほうわ)の腕前を競うイベント「H―1グランプリ」が11月、神戸市中央区の兵庫県民会館で開かれた。法話はもっと厳かに。そんな懸念もあったが、初の試みは盛況で、次回の開催が検討されている。
「H」は法話の頭文字。そのナンバー「1」を決めるイベントを通し、互いに切磋琢磨(せっさたくま)しようと、神戸と阪神、丹波篠山地域の真言宗僧侶たちでつくる「兵庫青年教師会」が主催した。
もとは栃木県の若手僧侶たちが考えたもの。須磨寺(神戸市須磨区)副住職の小池陽人(ようにん)さん(32)が関東を訪れたとき、イベントを取り上げるニュースを偶然見かけ、「自分たちもやりたい」と声をあげた。
兵庫県内には兵庫、播磨、但馬、淡路の四つの青年教師会があり、毎年持ち回りで若手僧侶の研修会を開いている。これまで高僧や学者による座学が一般的だったが、がらりと趣向を変えることにした。
もっとも「グランプリなんて浮ついている」「法話に優劣をつけるべきではない」との反対も。だが、「若い僧侶が一般の方に近い目線で語れば、もっと多くの人に興味を持ってもらえるのでは」という提案にも賛成意見が集まった。
イベントに挑んだのは、四つの青年教師会から2人ずつ選ばれた20~40代の僧侶8人。11月26日、真言宗の開祖・空海の掛け軸を掲げた舞台で、それぞれに工夫した法話を披露した。
大師寺(神戸市西区)の中谷宥善(ゆうぜん)さん(32)はアニメ「アンパンマン」をたとえに使い、「ばいきんまんを懲らしめた後、また仲間として受け入れる」のが「罪を憎んで人を憎まず」の精神、と説いた。
金剛福寺(神戸市灘区)の高見昭寛(しょうかん)さん(36)は、転んだ子どもが「痛いの痛いの飛んでいけ」と声をかけられると泣きやむことから、「見えないことでも一生懸命に信じることで思いが通じる」と語りかけた。
会場は立ち見を含め約380人で埋まり、寄席さながらに笑い声も沸いた。法話が終わるたび、5人の特別審査員が「表情がいい」「もっとお客さんの方を向いて」と真剣に講評した。
初代チャンピオンは、来場者が「また会いたい」と思った僧侶に投票して決めた。選ばれたのは、四国遍路の経験をもとに出会いの大切さを説いた小池さん。2位は高見さんだった。
小池さんは「混沌(こんとん)とした時代、法話に救われる人もいるはず。法要に限らず、こういう場で僧侶が自ら発信していければ」と話している。(飯島啓史)
「きょうよう」と「きょういく」大事 初代チャンピオン 小池陽人さん
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