静岡県藤枝市の山中で6月、看護師内山茉由子さん(当時29)=浜松市=の遺体が見つかった事件で、内山さんに対する逮捕監禁と営利略取の罪に問われた住所不定、無職伊藤基樹被告(28)に対し、静岡地裁浜松支部(山田直之裁判長)は20日、懲役4年(求刑懲役7年)の判決を言い渡した。山田裁判長は「若い女性を対象とした無差別的犯行で、社会に与えた不安は極めて大きい」と指摘した。
殺人罪、誰も裁かれぬまま 看護師監禁は被告認める
事件では、名古屋市天白区、無職鈴木充被告(43)も内山さんへの逮捕監禁、営利略取の罪のほか死体遺棄罪などでも起訴され、公判中。指示役とみられ、自殺した男(当時39)は殺人容疑などで静岡地検に書類送検されたが、容疑者死亡で不起訴となっている。
判決によると、伊藤被告は5月26日夕、鈴木被告と男と共謀し、浜松市の駐車場で内山さんの車に乗り込んで暴行して車を発進させ、27日午前4時20分ごろまでの間、内山さんを車内で監禁した。
公判で伊藤被告は起訴内容を認める一方、拉致については「(自殺した)男から運転手役を頼まれた。誰を狙うかは聞いていない」と従属的な立場だったと主張。27日午後5時ごろに再乗車した際にはすでに内山さんの姿はなく、「解放されたと思っていた」と説明していた。
判決では伊藤被告について「『人さらい』と告げられたうえで報酬目的で運転手役を引き受けたもので、犯意は強固」とし、「犯行に不可欠な役割を担った」と指摘した。
公判では、被害者参加制度を利用し、遺族が意見陳述。内山さんの姉は声を詰まらせながら「拉致がなければ殺人もなく、妹は家にいるはずだった。命が失われたことに対する責任を取ってほしい」と訴えていた。(増山祐史)