改修工事のために長期休館中の美術館で、学芸員や職員はどんな仕事をしているのか。つかの間の休息を楽しんでいる――のではなく、時には開館期間中にも増して忙しく働いていた。
美術講座に資料整理
10月下旬の金曜の夕方、愛知県図書館(名古屋市中区)1階の一角に50人ほどが集まった。お目当ては、愛知県美術館(愛知県美、東区)の学芸員による連続講座「美術と文学」。愛知県美は改修工事のため来年4月1日まで休館中(8階ギャラリーを除く)だが、今年6月から12月までに計4回の講座を図書館で開く。
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第3回のこの日は、愛知県美の南雄介館長が「マルセル・デュシャンの図書館」をテーマに講演。今年が没後50年となる現代美術の巨人・デュシャンについて、図書館で働いた経験もある人生や作風の変遷などを解説。会場には関連書籍のコーナーも設けられた。「皆さん真剣に聞かれていて、図書館の利用者と美術に関心のある層には一定の重なりがあると感じました」と南館長。
図書館の長屋徹館長は「両館とも組織的には愛知芸術文化センターに属し、館長同士もよく顔を合わせている関係で共同企画が実現しました」。図書館は今年、仕事帰りなどに気軽に立ち寄れるスペース「Yotteko(ヨッテコ)」を玄関脇に作った。連続講座は休館中も館の存在をPRしたい愛知県美側、新スペースでの催しを考えていた図書館側の両者に利点があった。講座の第4回は12月21日の午後6時から(事前申し込み不要)。
愛知県美の改修工事は耐震対応や照明・空調の更新が中心。壁の塗り替えや床の張り替えもする。収蔵庫が複数のフロアに分散しており、作品を移動させながら順に工事してきた。業者と綿密な調整を重ね、工事中も作品の管理に神経をとがらせる。
昨年25周年を迎えた愛知県美ではこれまで110回以上の企画展を開催。展示に関する資料を入れた段ボール箱が大量にあり、整理も休館中の重要な仕事だ。古田浩俊副館長は「学芸員にとって自分が企画した展示の資料はどれも捨てがたい。一定の基準で整理して、今後は『10年前のあの展示の資料が欲しい』という時、すぐ活用できるような形にしたいです」と語る。
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