日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な投資で生じた損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、前会長が、サウジアラビアの実業家の尽力により、約30億円分の信用保証を取り付けて担保不足を解消したことが、関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は、前会長が謝礼として、「販売促進費」などの架空名目で、日産側から約16億円を不正送金したとみている。
カルロス・ゴーン もたらした光と影
ゴーン前会長の弁護人によると、前会長は実業家について、サウジ王族への売り込みや、現地販売店とのトラブル処理を担ったと反論。約16億円は「信用保証の謝礼ではなく、仕事への正当な報酬だった」と容疑を否認しているという。
関係者によると、ゴーン前会長は2008年10月、自身の資産管理会社が新生銀行と契約していた私的な投資で約18億5千万円の評価損を抱え、一切の契約の権利を日産に移転した。09年2月に契約を資産管理会社に戻す際、銀行側から追加の担保を求められた。
前会長は、30年来の友人というサウジの実業家に協力を依頼。実業家は別の銀行に掛け合い、約30億円分の信用保証を取り付けた。前会長は同行が発行した「信用状」を新生銀に差し入れ、追加担保を免れたという。
前会長は4カ月後の09年6月から12年3月にかけて、日産子会社「中東日産」から実業家が経営する会社に、4回で計1470万ドル(現在のレートで約16億円)を送金し、日産に損害を与えた疑いで逮捕された。関係者によると、「CEOリザーブ(予備費)」というCEO(最高経営責任者)直轄の資金から、「販売促進費」や「販売委託料」といった名目で送金したという。特捜部は、実業家に業務実態はなく、不正な支払いとみている。