「私は日本に住んだことがあり、日本と日本の皆さんに大変思い入れがあります」――。英語教師として日本に住んだ経験を持ち、日本語を話すジェレミー・ハント英外相(52)が10日の安倍晋三首相の訪英に合わせてつくったビデオメッセージを朝日新聞に寄せた。
英語での発信を重視する河野太郎外相と合わせ、日英両国の外相が相手国の言語を流暢(りゅうちょう)に話す関係は、160年を超す日英外交関係の歴史でも珍しい。
メッセージでは「英国と日本は基本的な価値観を共有する民主的で革新的な国」だとし、「両国をこれまで以上に近づけることができることを楽しみにしている」と述べた。
ハントさんはオックスフォード大を卒業後、経営コンサルタントや弁護士として活動。2005年に保守党下院議員に当選して政界入りした。キャメロン前政権のスポーツ担当相として12年のロンドン五輪を担当した。188センチの長身。名門パブリックスクールの出身で、学生時代にラグビーをしたことがあるという。
8日の朝日新聞とのインタビュー(英語)では、今年、日本で開催されるラグビーのワールドカップにも触れ、「日本が(イングランドに次いで)2位になることを祈っています。大成功になると思います」と語った。また「来年のオリンピック(東京五輪・パラリンピック)にも行くつもりです」などと語った。
欧州連合(EU)からの離脱をめぐる16年の国民投票では、メイ首相と同様、残留派だった。だが、離脱が過半数となった投票結果を踏まえて、離脱を支持。EUとの協定案に基づく穏健な離脱を主張する。
メイ政権で保健・社会福祉相を経て昨年7月、協定案への不満から辞任したジョンソン外相の後任として外相に転じた。英メディアは、次の首相の有力候補のひとりと位置づける。
英政界きっての知日派だが、日本政府が国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を決めたことについて尋ねると「英国は決定に同意しません。鯨の資源が保たれているという日本の分析についても同意せず、懸念しています」と述べた。
その上で「友好国でも意見が異なることは時にあります。だからといって、日本とほかの多くの問題で協力できないというわけではありません。日本はアジアにおいて最も安定し、民主主義、経済的な発展を伴った平和を愛する国ですから、合意できることに(協力を)集中したい」と語った。
1990年代、英語教師として日本に滞在していた際は「毎朝、朝日新聞を読み、漢字の勉強をしていた」というハントさん。今春にはプライベートで京都への家族旅行も計画しているという。(ロンドン=石合力)