「全てやり尽くした」。レスリング女子で五輪と世界選手権を16大会続けて制し、「霊長類最強女子」とも称された吉田沙保里さん(36)。10日の引退会見では時折笑顔をみせながら、約200人の報道陣を前に思いを語った。
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吉田さんは黒のワンピースに白のジャケット姿で会見場に姿を現した。五輪4連覇を目指した2016年リオ大会は銀メダルに終わり、「応援してくれた方々に恩返しするには東京五輪で自分の姿を見せること」と考えてきたという。だが、後輩たちが世界で活躍するのを目の当たりにして「勢いを感じた。もうバトンタッチしてもいいのかなと。全てやり尽くした」と引退の理由を語った。
昨年12月、母幸代(ゆきよ)さんに引退を告げた。「あなたが決めたことだから、それでいい。ご苦労様」と話してくれたという。3歳からレスリングを教えてくれた亡き父の栄勝(えいかつ)さんについて聞かれると「本当によく頑張ったと天国から言ってくれていると思う」と答えた。
最も印象に残る試合には、個人戦の連勝が206でストップしたリオ五輪決勝を挙げた。「こうやって戦う仲間がいたから今まで頑張ってこられたんだな、と負けて知ることができた。成長させてくれた」
レスリング界は昨年、恩師である栄和人・日本協会前選手強化本部長のパワーハラスメント行為で揺れた。騒動を乗り越えて復帰した伊調馨選手からは直接、東京五輪で5連覇を目指すことを聞いたという。「素直にすごい。ともにここまでずっと仲間として頑張ってこられた」と述べた。
今後については日本代表選手らの指導とともに「やっぱり女性としての幸せというのは絶対につかみたい」と吉田さん。日頃から口にしている結婚への素直な思いもにじませた。(榊原一生)