「毎月勤労統計」をめぐる問題で、厚生労働省が不正調査を始めた2004年時点の調査マニュアル「事務取扱要領」にあった不正な抽出調査を容認する記述が、15年調査の要領から削除されていたことが17日、わかった。不正を隠蔽(いんぺい)しようとした疑いがある。
厚労省はこの問題の「特別監察委員会」を設置し、この日午前に初会合を開いた。この経緯を含めて、組織的な関与や隠蔽の意図の有無などの究明を進める。
この統計は政府の「基幹統計」の一つ。厚労省が賃金の動向などを毎月調査して発表するもので、実務は都道府県が担う。従業員500人以上の事業所はすべて調べるルールだが、04年から東京都分で全約1400事業所のうち約3分の1を抽出して調べていた。
03年に作成され、04年から使われていた要領では「規模500人以上事業所は東京に集中しており、全数調査にしなくても精度が確保できる」と明記し、この不正を容認していた。この記述について、根本匠厚労相が特別監察委に出席した後、取材に対し15年の要領から削除されていると明かした。隠蔽する意図の有無は「調査していく」とした。
特別監察委は弁護士ら6人で構成。委員長には、基幹統計の調査手法などを審議する総務省の統計委員会元委員長の樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長が就いた。樋口氏を除く委員は省内に常設されている監察チームのメンバーだ。
また、厚労省は17日午前、総務省の統計委員会に対して、一連の経緯についての調査結果を報告した。ただ、中身は11日に検証結果として公表した内容とほぼ変わらなかった。
会合ではまず、04年に不適切な調査が始まったきっかけについて質問が集中したが、厚労省の担当者は「詳細は調査中」と繰り返した。18年1月分から全数調査に近づける補正を始めた際、厚労省が組織として問題を把握していなかったのかを問われても、担当者は「一部の職員は認識していたが、組織全体として共有していなかった」と従来通りの説明にとどめた。
西村清彦委員長は「不適切調査が15年以上にわたってつづき、統計の信用性に疑念を抱かせる重大な問題だ。厚労省には猛省を求める」と指摘し、「現時点では十分な情報提供があるとは言いがたい」と強く批判した。