抽象画や水墨画のようにみえる、白と黒のシンプルな画面。さて、どのように制作されたのでしょうか。
これは、大阪市立東洋陶磁美術館が所蔵する陶磁器を撮影し、画像をデジタル加工したものだ。米国のアーティスト、エリック・ゼッタクイスト(1962年生まれ)が手がけた「オブジェクト・ポートレイト」作品34点と、もとになった古陶磁を合わせて展示する展覧会が、この美術館で開かれている。日本でのゼッタクイストの展覧会は初めて。
たとえば、凹の字のように白と黒が塗り分けられた作品は、水注の首と注ぎ口との空間を写した。墨で描いたような二つの曲線は、逆さに伏せた皿の底と縁。一部を拡大したり、全体のシルエットを写したり、ひびの模様に着目したり、さまざまな作品が並ぶ。
ゼッタクイストは92年までの10年間、現代美術家・杉本博司の助手を務め、写真表現と東洋の古美術を学んだ。自身でも古美術のギャラリーを経営しており、古陶磁の見方を共有する手段として、このシリーズを始めたという。これまで、米国フィラデルフィア美術館(2014年)やバンコクの東南アジア陶磁美術館(16年)で、展覧会を開催した。
ゼッタクイストの作品は、陶磁器の形や模様の思わぬ美しさや面白さを教えてくれる。もちろんそれだけではなく、作品単体としてもスタイリッシュで魅力的だ。担当した宮川智美学芸員は「日本で初めて紹介される新しい表現をまずは楽しんでもらい、館蔵品の名品とも改めて向き合ってみてもらいたい」と話す。
2月11日まで。月曜休館(11日は開館)。一般600円。大阪市立東洋陶磁美術館(06・6223・0055)。(松本紗知)