真っ白で軟らかそうな表面は、触るとプルッと揺れそう。豆腐かと思いきや、さにあらず、実は白磁の作品だ。熊本・天草陶石の白色に魅了された熊本県合志市の陶芸家、高木(たかき)健多さん(32)が、純白さを最大限に表現する題材を探す中でたどり着いた。
水を張った木おけに、ふぞろいの形の「豆腐」(セットで10万~20万円)が並ぶ作品は、今秋に福岡市であったアートイベント「アートフェアアジア福岡」でひときわ注目を集めた。
一口大の豆腐にトロリとクリームがかかったような「白器(はっき)豆腐」(1万円~)、本物の釘を貫いた「釘貫(くぎぬき)豆腐」(3万6500円)などの作品もあり、いずれも本物と見まがうほどのリアルさ。「『これって、焼き物なの?』と驚かれる方が多く、うれしい反応でした」と高木さん。
福岡のデザイン専門学校を卒業した2007年、実家が天草の窯元の同級生に誘われ、陶芸の道に。5年ほど修業し、14年に郷里の合志市で窯を開いた。
熊本・天草でとれる天草陶石は陶磁器の良質な原料で知られ、有田や波佐見などの産地で古くから使われている。修業時代、遊び感覚で土をこねているうち、吸い込まれそうな無垢(むく)の白色にひかれた。「他の陶磁器にはない、神秘的な色合いに夢中になった。美しいものを、より美しく見せるにはどんな題材がいいのか」。陶石の美しさを引き出すには真っ白な豆腐が最適だと考え着いたという。
堅い焼き物で、豆腐の絶妙な軟…