トランプ米大統領が進める「国境の壁」建設費をめぐる与野党対立に端を発した政府閉鎖は、25日に35日目に入り史上最長を更新している。約80万人の連邦政府職員が給料の未払いなどで苦しい生活を強いられ、好調な経済を押し下げるおそれも出てきた。職員の怒りや不安は政権を直撃している。(ワシントン=青山直篤、土佐茂生)
「指導者たちには私たちの暮らしをもてあそぶなと言いたい。(彼らは)ものを乞うために寒さのなかで待つこともない人たちだ」
連邦裁判所の職員ステファニー・ミアズさん(50)は23日、こう憤った。手には支給された孫娘のおむつ。首都ワシントンの中心部では1月中旬から、有名シェフの発案で、給料を受け取れない政府職員のため食事や生活物資を配る。連日、長蛇の列だ。
米紙ワシントン・ポストによると、自宅待機になったり、無給で働いたりしている職員は約80万人に上る。うち14%が年収5万ドル(約550万円)に満たない層だという。
列に並んだ司法省勤務のニコル・ウィルズさん(37)は「経済全体に影響が出て、貧しさの『網』が広がっていく」とこぼす。
悲痛な叫びはトランプ政権に届いていないようだ。富豪でもあるロス商務長官は24日、CNBCテレビで、無給の職員がボランティアの食料配給に頼ることについて「全く理解できない」として、金融機関のローンを利用すれば良いと語った。野党やメディアから「市民の気持ちが分かっていない」と批判が起きた。
トランプ氏が実績を誇る好調な経済にも影が忍び寄る。昨年末から、世界経済の減速や米中通商紛争の懸念で金融市場は不安定な動きを続ける。政府閉鎖によって国内総生産(GDP)の7割を占める消費が冷え込めば、経済は大きな打撃を受けかねない。
それだけにトランプ政権も気をもむ。米大統領経済諮問委員会のハセット委員長は23日、閉鎖が続けば1~3月期の実質GDPの成長率が「ゼロに近づく可能性がある」と語った。カドロー国家経済会議議長は24日、記者団に「政府が再開されれば経済の『軽い故障』は瞬く間に消える」と述べ、市場の不安を打ち消そうと躍起だ。
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