経済インサイド
国内金融最大手、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が昨年12月、6年ぶりの社長交代を発表した。中核銀行である三菱UFJ銀行の三毛(みけ)兼承(かねつぐ)頭取(62)が、今年4月1日付で持ち株会社のMUFG社長を兼務する。下馬評通りの「無風人事」だったが、グループを束ねる持ち株会社と銀行トップを分けるのが主流の中では異例でもあった。決断の背景には何があったのか。
「ガバナンス(企業統治)の本来の形から言えば、必ずしも望ましいとは言えない、というのが指名・ガバナンス委員会の一致した意見です」。
昨年12月26日、三毛氏とともにトップ交代の会見に臨んだMUFG現社長の平野信行氏(67)はそう語った。
一般に、多くの企業を束ねる持ち株会社のトップはグループを統括し、傘下の事業会社のトップはグループの方針に沿って事業に専念する。持ち株会社トップは事業会社の仕事ぶりを監督し、事業会社は執行するという役割分担だ。3メガバンクでも、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)やみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は、FGの社長と銀行の頭取を分けている。
それなのにMUFGはなぜ兼務なのか、と会見では平野氏に問われたのだった。社外取締役を交えた指名・ガバナンス委員会でも「兼務」は大きな焦点だったという。
MUFGは2015年に「指名委員会等設置会社」に移行した。取締役の人事や報酬を決める指名・ガバナンス委員会はメンバーの過半数が社外取締役で、経営の透明性が高いとされる。今回の人事は、委員会で昨夏から計7回、次期ポストについて議論されたが、結局、三毛氏がFG社長と銀行頭取を兼ねることになった。
「審判長とキャプテンが同一人物」とも揶揄(やゆ)される兼務。銀行を監督する金融庁も最近、ガバナンスには厳しく目を光らせている。同庁幹部は「(兼務には)相応の『理屈』が必要なのは間違いない」という。MUFGは人事発表の1カ月ほど前、同庁に兼務についてうかがいを立て、一定の理解を得たともいわれる。
どんな「理屈」で兼務にすることにしたのか。平野氏は会見で「早期の強力なリーダー確立の必要性」と、「(三毛氏の)頭取在任期間がまだ短い」という2点に触れた。
実は三毛氏はもともと、頭取の…