フィリピン南部スールー州ホロのキリスト教会で27日、2度にわたる爆発があり、国家警察によると20人が死亡、約100人がけがをした。過激派組織「イスラム国」(IS)の「東アジア州」が同日付で犯行声明を出した。南部では平和と安定をめざす「イスラム自治政府」の発足に向け動き出しているが、足並みをそろえるのは容易ではなさそうだ。
ドゥテルテ大統領は28日に現場の教会を訪れ、犠牲者に哀悼の意を示した。
爆発現場のホロ島を含むスールー諸島は、ISに忠誠を誓う過激派組織アブサヤフの拠点だ。2017年5月には、ISフィリピン支部リーダーとされる同組織幹部が武装組織マウテグループと組み、ミンダナオ島マラウィで国軍との戦闘を5カ月以上続けた。今回も現場近くの監視カメラ映像などから、アブサヤフの関係者とみられる6人の関与が疑われている。
この事件で、フィリピン政府は和平実現の出ばなをくじかれた格好だ。自治を求める武装勢力の争いが続いた南部では、国内最大の武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)と政府の和平合意により、イスラム教徒に一定の自治権を与える「イスラム自治政府」が22年に発足する。今月21日には参加自治体を決める住民投票が行われ、まず5州1市の参加が決まったばかりだった。
ただ、事件が起きたスールー州などでは、住民投票でも反対が賛成を上回った。MILFが自治政府を主導することに対し、反発する勢力もあるとみられている。(ハノイ=鈴木暁子)