嵐とは「世界中に嵐を巻き起こす」という意味で付けられた名だ。私は、1999年のデビュー時から嵐を取材してきた。10代の彼らを初めてインタビューしたとき、その名とは対極の穏やかな雰囲気が漂っていた。優等生的というか、おとなしく、品がよい。独特のピュアさを感じさせた。アラフォーになってもなお、当時のイメージを持ち味にしてきたように見える。
嵐5人で休止決断「こんなに話す時期なかった」会見詳報
特集:嵐、活動休止へ
27日の「活動休止」を告げる記者会見で、彼らは「5人でないと嵐ではない」「1人でも欠けたら嵐でない」と繰り返した。デビュー時からたえず口にしてきた言葉だった。
「国民的アイドル」として、お茶の間で幅広く支持されてきた彼らは、世代でいえばバブル崩壊後のロストジェネレーション(失われた世代)、いわゆる「ロスジェネ」最年少に属する。この世代は、グローバル化、新自由主義が進むなかで、不安定雇用、格差社会にさらされ、「生きにくさ」を体感していた人々である。
嵐の人気に火がつき、文字どおり「国民的アイドル」になったのは、デビュー後7年ほどたってからだ。それはリーマン・ショックから東日本大震災へ、世の中の閉塞(へいそく)感が極まっていく時代と重なる。5年前、デビュー15周年を迎えた嵐を、雑誌「AERA」で取材したとき、5人全員が「自分たちの先のことはわからない」と口にした。「先が見えないからこそ、今を頑張るしかない」「自分たちがなぜ支持されているのかもわからない」「今の人気は夢ではないか」とも語っていた。冷静に自分たちを見ている。プロ意識が強く、仕事に懸命に向き合う姿は、不安定な社会で懸命に生きている人々の思いと共鳴し合うものがある。そう思うと、支持される理由がわかる気がした。
その取材で、リーダーの大野智…