韓国の元慰安婦で、2015年の日韓慰安婦合意に反対する象徴的存在とされてきた金福童(キムボクトン)さん(92)の告別式が1日、ソウルの日本大使館近くの路上で行われた。支援団体「正義記憶連帯(旧挺対協)」を中心に「市民葬」として行い、千人以上が参加した。
日本大使館近くの路上は、慰安婦問題を象徴する「少女像」が立ち、1992年以降の毎週水曜日、日本政府に公式謝罪と法的賠償を要求する「水曜集会」が開かれてきた場所。金さんは体調を崩すまで集会に参加し、問題の「最終的かつ不可逆的」な解決をうたう日韓合意の破棄や安倍晋三首相の直接謝罪の実現を訴えていた。この日は支援団体が路上に金さんの遺体をのせた霊柩(れいきゅう)車を止め、全員で黙禱(もくとう)。弔辞を読み上げた。
支援団体によると、1月28日の金さんの死去後、遺体が安置されたソウルの病院には文在寅(ムンジェイン)大統領や潘基文(パンギムン)元国連事務総長らを含む約6千人が弔問に訪れた。韓国では、金さんの願いに添って日韓合意を破棄すべきだとの声も高まっているが、韓国外交省報道官は31日、「(日本政府に合意破棄は求めないという)韓国政府の方針に変わりはない」と述べた。
告別式について西村康稔官房副長官は1日午前の閣議後会見で「在韓国大使館の安寧を妨害、または威厳を侵害するものであれば、外交関係に関するウィーン条約の規定に照らして問題がある」と述べた。「大使館の安寧が保たれる重要性は、平素から韓国側に申し入れている」とも話した。(ソウル=武田肇)