北朝鮮が2月末にも米朝首脳再会談に応じる見通しになっている。背景の一つには国際社会の経済制裁による困窮があるとされる。北朝鮮の経済は今、どうなっているのか。朝日新聞は昨年12月に咸鏡北道清津(ハムギョンブクトチョンジン)で撮影された市場の映像を入手した。経済苦の中、たくましく生きる市民の姿があった。
働く大半が女性
北朝鮮関係筋から映像の提供を受け、北朝鮮の生命工学の専門家で2009年に脱北した金炯洙(キムヒョンス)博士に解説してもらった。
市場には500~1千人の商人がいる。地面はコンクリート。「雨でも雪でも商売できるよう地面を固めているのです」(金博士)。市場は基本的に祝日を除いて毎日開かれ、商人が農場などに駆り出される農繁期に営業時間が短くなる程度という。
働いているのは大半が女性。男性は国営の工場や鉱山などに出勤する義務があるためだ。ただ、最近は賄賂を払って欠勤を認めてもらい、商売に精を出す男性も多い。
遠くに壁が見える。防犯とともに、未登録者が勝手に入って商売するのを防ぐ意味がある。売り場ごとに低い仕切りがある。
金博士によれば、商人は市場管理所に保証金を払い、場所を確保する。また毎夕、売り上げの一部を、売り場を巡回する市場管理所員に支払う。
映像の中で商人が一生懸命、小麦粉や大豆、もち米などの値段を説明している。1キロが7千ウォンのでんぷんを指さし、「6千ウォンでいいよ」と声をかけている商人もいる。
金博士によれば市場の入り口には通常、公に定められた価格表が掲げられているが、誰も守らない。「市場の中は資本主義が支配している。みな少しでも高く売り、少しでも安く買おうと必死なのです」。値段設定を巡り商人同士のけんかも絶えないという。
食糧には「三つのルートがある…