明治から昭和の福岡の街を写した白黒写真が人工知能(AI)技術でカラー化され、福岡市東区の国登録有形文化財「箱嶋家住宅」で展示されている。当時の暮らしが生き生きと映し出される。
筥崎宮(福岡市東区)周辺の町家の魅力を紹介する企画展の一環。九州大名誉教授の藤野清次さんが、早稲田大の研究者らが開発したAIの自動色づけ技術を使い、筥崎宮や住民などから借りた古い白黒写真をカラー化した。
筥崎宮の玉せせりで躍動する締め込み姿の男たち、化粧まわしで奉納土俵入りする横綱、松原が広がる箱崎浜で遊ぶ少女……。「肌のツヤやハリが伝わり、当時の暮らしや息づかいが鮮やかによみがえる」と、藤野さんは話す。
箱嶋家当主の箱嶋文衛(ふみもり)さん(75)の父は、1914(大正3)年生まれ。その父が幼い頃、稚児行列によろい姿で参加したときの写真を色づけした。すると、背景の木々や岩がはっきり映り、自宅の庭で撮ったものだと初めて分かった。箱嶋さんは「何度も見た写真だったけど、カラーになっておやじの表情に生気がみなぎって、面影が鮮明になった。この家を残そうとする自分を後押ししてくれる感じがした」と振り返る。
写真展は11日までの午前10時~午後4時。入場料300円(高校生以下無料)。藤野さんがモニターにカラー化した写真約60枚を映すほか、普段は非公開の周辺の町家の写真も展示する。問い合わせは箱嶋さん(090・5043・2107)。(安田桂子)