将棋の高校生棋士、藤井聡太(そうた)七段(16)と師匠の杉本昌隆七段(50)が5日、大阪市福島区の関西将棋会館で、それぞれの対局に臨んでいる。第77期将棋名人戦・C級1組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の対局で、藤井七段は近藤誠也五段(22)と、杉本七段は船江恒平六段(31)と戦っている。師弟ともに勝った場合、そろってB級2組への昇級が決まる。順位戦の同じクラスで師弟そろっての昇級は32期ぶりだ。
藤井聡太 名人への道
また、藤井七段が勝てば、順位戦でデビュー以来負け無しの19連勝の新記録も誕生し、ほぼ半世紀ぶりの記録更新となる。
ただし藤井七段だけが勝って杉本七段が敗れた場合は、この日は昇級者は決まらない。3月5日の最終戦に、もつれ込む。
両対局とも午前10時に始まり、持ち時間はそれぞれ6時間ずつ。終局は夜になる見通し。藤井七段はスーツ姿、杉本七段は和服姿。本局に勝てば他の対局の勝敗とは関係無く無条件で昇級が決まる杉本七段は、気合が入った表情だ。
今期のC級1組には39棋士が参加。それぞれ10局指し、上位2人が昇級する仕組みだ。この日は成績上位4人による対局が組まれ、これまでの成績は杉本七段が8勝0敗、藤井七段も8勝0敗、近藤五段が7勝1敗、船江六段が7勝1敗と競り合っている。
藤井七段と杉本七段がそろって勝った場合、二つの記録が誕生する。
一つは、順位戦での師弟そろっての昇級。1986年度の第45期B級2組順位戦で師匠の大内延介(のぶゆき)九段(故人)と弟子の塚田(つかだ)泰明(やすあき)九段(54)がそろってB級1組に昇級して以来だ。
師弟そろっての昇級争いについて、藤井七段は1月8日、報道陣に対し、「師匠も今のところ全勝ということも知っていますけど、自分がやるべきことは自分自身の昇級を目指して目の前の一局一局で全力を尽くすこと。自分は自分で順位戦でしっかり全力を尽くしたい」ときっぱりと答えた。
一方、杉本七段は「今期の順位戦で弟子と一緒に昇級争いを演じることは義務だと思っています」と言い続けてきた。同じC級1組になったことで周囲からの期待も大きかったからで、「昇級に手が届くところまで来て、ある意味、すでに目標は達成したようなもの」と話している。
杉本七段は、最上位のA級に次ぐB級1組まで昇級したことがある実力者だが、その後、降級した経緯がある。記者の取材に対し、「私にとっては失ったものを取り返す戦い。藤井七段はこれから毎期、昇級争いをするでしょうから、同じ昇級といっても、私とは意味合いが違います。目の前の一局に全力を尽くしたい」と決意を語った。
もう一つの記録は藤井七段のデビューから順位戦19連勝の新記録だ。これまでは中原誠十六世名人(71)が66年度の第21期から67年度の第22期にまたがって達成した18連勝だった。デビューから順位戦で無敗の藤井七段が、どこまで勝ち続けるのか、注目は高まっている。
両対局の大盤解説会が5日午後6時から、関西将棋会館で開かれる。解説はA級棋士の糸谷(いとだに)哲郎八段(30)と里見香奈女流四冠(26)。料金は一般2千円など。問い合わせは関西将棋会館(06・6451・0220)へ。(佐藤圭司)