損傷を受けた側の脳と、逆側の空間にある物体などが認識しづらくなる「半側空間無視」の患者も、生き物など特定の画像だと目がよく追っている――。こんな結果が国立障害者リハビリテーションセンターの研究で分かった。効果的なリハビリに役立てられると期待している。
半側空間無視は、脳卒中の後に生じる脳の機能障害の一つ。例えば右脳が傷つくと、体の左側にある人や物を認識しづらくなり、生活に支障がでる。
同センターの河島則天・神経機能研究室長らのグループは、赤ちゃんやキウイ、金魚、花など6種類の静止画を用意。それらの画像を、脳卒中で半側空間無視になった27人とそうでない14人、さらに健常者29人に1枚あたり5秒見せた後、画像を左右反転させて、視線が集まる位置が変わるかどうか調べた。
健康な人らは反転に伴い視線が集まる場所も反転した。半側空間無視の人は多くの画像では位置が変わらない傾向がみられた。しかし、赤ちゃんや金魚の画像を見ると、視線の集まる場所が反転した。
グループは、対人コミュニケーションに関わる画像や泳いでいる向きなどの情報に、よく反応したためと見ている。河島さんは「反応がいい画像を使った効果的なリハビリをすれば、脳の機能回復につながる可能性がある」と話す。
論文は英科学誌コーテックスに掲載された。(戸田政考)