女性との結婚後、女性への性別適合手術を受けた京都市の50代の会社経営者が8日、戸籍上の性別を女性に変更するよう京都家裁に申し立てた。既婚者の性別変更を認めない性同一性障害特例法の規定は憲法が保障する幸福追求権などに反すると主張している。
国内では同性婚は法的に認められておらず、代理人の南和行弁護士によると、戸籍の性別変更により同性婚の成立を求める申し立ては異例という。
申立書や本人によると、申立人は29歳で結婚し、長女と3人で暮らす。2012年に心と体の性が一致しない性同一性障害と診断され、14年に性別適合手術を受けた。ただ、戸籍上は男性のため、男性更衣室の使用を迫られたり、低額負担で済む京都市の乳がん検診が受けられなかったりした経験がある。
性同一性障害特例法は戸籍の性別変更を認める要件を定めており、結婚していたり、未成年の子がいたりする人は対象外になる。長女は成人しているが、要件を満たすには離婚しなければならず、憲法が保障する幸福追求権や法の下の平等に反すると主張している。家族も性別変更を望んでいるという。
申し立て後、本人が記者会見し、「なぜ、女性として安心できる幸せな生活と、家族との安定した幸せな生活の二者択一を迫られるのか。憲法に照らし合わせたときに生じる矛盾に気がついてほしい」と語った。南弁護士は「申し立てにより、同性婚への理解と実現が進んでほしい」と述べた。(興津洋樹)