衆院予算委員会は18日、統計問題をテーマに集中審議をした。賃金の動向を示す「毎月勤労統計」の調査手法の変更について、厚生労働省に「問題意識」を伝えた元首相秘書官は「私個人の考え。首相の指示ではない」と答弁。安倍晋三首相も自身の関与は否定したものの、「問題意識は当然」と元秘書官を擁護した。
賃金の伸びを高く見せかける「アベノミクス偽装」が行われたと批判する野党は、政権中枢の意向が勤労統計の調査手法の変更に反映したと論陣を張った。
「アベノミクスの成功を演出するため、恣意(しい)的な統計操作を官邸主導でやったのではないか」。国民民主党の玉木雄一郎代表が指摘したのは、中江元哉・元首相秘書官(現・財務省関税局長)が厚生労働省に伝えた「問題意識」の影響だった。
中江氏は2015年3月31日、姉崎猛統計情報部長(当時)ら厚労省幹部2人を首相官邸に呼んで説明を受け、「問題意識」を伝えたとされる。
厚労省は勤労統計で中規模事業所(従業員30~499人)の調査対象を2~3年ごとに総入れ替えし、その際、過去のデータを実勢に合わせる修正を実施していた。中江氏はこうした手法について「改善の可能性を考えるべきではないか」と変更を促した。
15年1月の入れ替え時には「下方修正」が行われ、月によっては賃金伸び率がプラスからマイナスに転じていた。野党側は「厚労省や政府全体が『何とかしなきゃ』と思っていた」と指摘するが、中江氏は「政策的なもの」と説明。与党議員の質問には「『問題意識』については、あくまで秘書官である私個人としての考えで、首相の指示ではない。厚労省から説明を聞いたのも首相の指示ではなかった」と答弁した。
厚労省は15年5月に調査手法について議論する有識者検討会を設置。検討会は15年8月に「総入れ替え方式で行うことが適当」という現状維持の素案をまとめた。だが翌9月に厚労省がまとめた「中間的整理」では一転、事業所の入れ替え方法を「引き続き検討」となった。検討会の議事録によると姉崎氏が「部分入れ替え方式を検討したい」と表明したという。
中江氏の「問題意識」と厚労省…