訪日外国人客の増加をあてこんだ宿泊施設の建設が全国で進むことを巡り、ニッセイ基礎研究所は、大都市圏から遠い12県では2020年の宿泊需要が17年の実績を下回るとの試算を発表した。宿泊者の8割以上を占める国内客の減少幅がより大きいため。地域の実情に応じて「稼働率の低い旅館など、既存施設の活性化に力を入れた方がいい」と警鐘を鳴らしている。
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需要減を見込むのは岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、群馬、新潟、福井、島根、山口、高知の12県。「20年に訪日客4千万人」の政府目標が達成されても宿泊は大都市に偏り、この12県では人口減や高齢化による国内客の減少の影響がより大きい。減少幅は福島の1・4%が最も大きく、島根の1・3%、福井の1・1%と続く。
30年に政府目標の6千万人が達成された場合でも、さらに青森、茨城、埼玉、三重、鳥取、徳島、愛媛、宮崎の8県が加わって計20県で需要が減るという。
民泊を除く宿泊施設(ホテル、旅館、簡易宿所)の客室の販売数や稼働率を試算した。全国の総計では、ホテルは30年に向けて客室の販売数の増加が続くが、旅館は20年以降に頭打ち、簡易宿所は20年以降は横ばいで推移するとみる。
ただ、開業予定の客室増を加えると、ホテルの稼働率は20年時点で70%を割り込む見通し。京都では特に、20年までに必要とみられる3千室を上回る1万1千室のホテルの開業が予定されており、「供給過剰の懸念がある」としている。(伊沢友之)