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トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は28日、ベトナムの首都ハノイで会談します。昨年6月に続き、2回目となる米朝首脳会談の模様をタイムラインで追います。米国や朝鮮半島に詳しい記者の解説もお届けします。
(タイムライン上の表記は日本時間)
分かりやすい米朝首脳会談まとめ
ハノイで28日、一対一の首脳会談に臨むトランプ氏(右)と正恩氏=ロイター
10:55
米朝首脳会談が始まる
市民は歓迎ムード「ベトナムで平和実現を」
米朝会談が行われているベトナムの首都ハノイは歓迎ムードに沸く。
28日早朝、ホーチミン在住の芸術家フン・クウ・ロンさん(47)が、トランプ氏と正恩氏が握手する巨大な絵を、会談会場の近くのオペラハウス前に持ち込んだ。
絵は高さ約3メートル、幅約2メートル。ベトナム国旗が描かれた民族衣装を着たロンさんは「戦争のあったこのベトナムで平和が実現してほしい」と話した。
トランプ氏の大ファンという人も会場近くに駆けつけた。グエン・ホアン・ヒエップさん(14)は会談初日の27日夜、「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」と書かれた帽子をかぶり、会場近くに立っていた。
ヒエップさんは「トランプ氏は経済を豊かにしてくれる。そして、言ったことを実行する人だ」と大人っぽく語るが、一番望んでいるのは「一緒に写真を撮ってもらうこと」と、笑顔で答えた。
28日、会談は2日目を迎える。両国の思惑が交差するなか、世界がさらなる平和へ向かうのか、地元の人たちは期待を込めて見守っている。(ハノイ=竹花徹朗)
労働新聞、大々的に報道
北朝鮮の労働新聞(電子版)は28日付の1~2面で、ハノイで27日にあった正恩氏とトランプ氏の会談と夕食会の記事を写真17枚と共に大きく報じた。
同紙は夕食会について「和やかな雰囲気で行われた」と説明。「シンガポールでの対面後、両国関係で相当の進展があったことが高く評価された。今回の会談で、包括的で画期的な結果を導き出すよう、意見が交わされた」と伝えた。(ハノイ=牧野愛博)
10:45
正恩氏が会談場所のホテルに到着
10:41
トランプ氏が会談場所のホテルに到着
ハノイで28日、ホテルを出発したトランプ氏の車列=AP
10:40
正恩氏がホテルを出発
正恩氏の車列が宿泊先のホテルを出発。沿道で北朝鮮と米国の旗を持ったベトナムの子どもたちが見送る。
10:24
正恩氏が乗る車がホテル到着
メリアホテルに正恩氏が乗るとみられる北朝鮮の国旗がはためく車列が入る。
正恩氏が泊まるメリアホテルの正面入り口では、ライフル銃を持った武装警官らが目を光らせた。
沿道からは近くの学校の子供たちや住民らが、国旗や花を手に出発を見届けようとした。制服警官が沿道のギャラリーが規制線から道路に出てこないよう、時折、笛を鳴らして警戒にあたった。
多くの報道陣もカメラを構えて待った。
ハノイで28日、米朝首脳会談を前に、正恩氏が泊まるホテルの路上で警備にあたる警察官=ロイター
韓国のパン屋が活躍
ハノイ市内に設けられた米朝首脳会談の国際メディアセンターでは、韓国のパン屋でベトナムにも店舗がある「パリバゲット」が、世界から来た記者たちに朝食を配っている。
1回目の米朝首脳会談、南北首脳会談に続きブースを出店している。
会長が北朝鮮の黄海出身だといい、「朝鮮半島の平和を願って」の出店だという。
韓国から来たブースの責任者は「小さなサポートがよりよい平和につながってほしい」と話した。
世界から来た記者たちに配られているホットドッグ=28日、ハノイ、小原智恵撮影
午後、合意文書に署名へ
米ホワイトハウスが発表した28日の予定は、以下の通り。
11時00分 トランプ氏と正恩氏による1対1の会談
11時45分 閣僚などが加わる拡大会合
13時55分 昼食会
16時5分 合意文書の署名式
17時50分 トランプ氏が記者会見
20時5分 トランプ氏がハノイを発ち、帰国の途に
佐藤武嗣編集委員の速報解説
功焦るトランプ氏、日本政府やきもき
非核化をちらつかせる金正恩氏に、功を焦るトランプ氏――。2回目の米朝首脳会談は、そんな構図の中で行われる。「ロシア疑惑」追及など国内政治にあえぐトランプ氏が、目先を変えようと、米朝首脳会談で安易な妥協をしないか注目だ。
トランプ氏は成果を出そうと必死だ。交渉が始まってもいないのに、27日夜に「(会談は)大成功するだろう」と語った。
米議会は27日に公聴会を開き、トランプ氏のロシア疑惑への関与を元弁護士が暴露。批判の矛先をそらすため、米朝会談をこの日程にしたのではないかとも米メディアは報じている。
米民主党の有力議員らはトランプ氏の出発前、北朝鮮が前回会談後も完全な非核化に反した動きをしていると指摘し、「本格的な外交計画の実行を望む」との書簡を送った。手ぶらでは帰れない。
この状況を見過ごす北朝鮮ではない。正恩氏はこれまでも寧辺(ヨンビョン)核施設廃棄の可能性に言及しており、こうしたカードを切って「見返り」を引き出そうとするに違いない。
問題は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」への行程表がしっかり示せるかどうか。だが、トランプ氏は会談成功を印象づけようと、安易な妥協カードを切りかねない。
昨年6月に行われた初の米朝会談では、米国防総省も知らされていなかった「米韓合同軍事演習の中止」を北朝鮮に約束した。今回も、確実な非核化の担保がないのに、朝鮮戦争終結宣言を約束したり、将来的な在韓米軍撤退や経済協力などに言及したりしないか、日米両政府の関係者は神経をとがらせている。
日本外務省幹部は「前回の会談後、トランプ氏は記者会見で日本が経済支援でカネを出すと発言した。今回も『日本のカネ』に言及しなければよいが」と警戒している。
ハノイで27日、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による夕食会が行われるホテルの前に集まった人たち=AP
1日目夕食会、「超軽め」のメニューに変更
両首脳は27日午後8時半ごろから、ハノイのメトロポールホテルで会談。冒頭、トランプ氏は「1回目の首脳会談で我々は大成功を収めた。今回も同等かそれ以上の成功となるよう願う」、正恩氏は「我々は明日、とても忙しい一日を送る」と発言した。
27日午後9時過ぎには、同じホテルで夕食会に臨んだ。米ホワイトハウスが発表したメニューは以下の通り。
【前菜】冷たいエビのカクテル、ロメインレタスと刻んだアボカドにレモン、ハーブ、サウザンドアイランドドレッシング
【メイン】牛サーロインのグリル、新鮮なキムチを詰めた梨
【デザート】チョコレートラバケーキ、新鮮なベリーとバニラアイスクリーム
【飲み物】干し柿と蜂蜜で甘みをつけた(朝鮮半島の)伝統的な飲み物
米CNNなどによるとメニューは直前に変更され、米国と朝鮮風を織り交ぜた4品の「超軽め」のディナーになった。
現地報道によると、当初代表記者団に明かされた品書きでは、ホタテとグリーンマンゴーのサラダ、ハノイ風揚げ春巻き、タラを使ったベトナム料理「チャーカー」(揚げ魚の鍋料理)などベトナム風の5品が予定されていたという。
ハノイで27日、夕食会に臨んだトランプ米大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=AP