カナダ司法省は1日、米国の要請で逮捕した中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(モンワンチョウ)・副会長兼最高財務責任者(CFO)について、米国への引き渡しの是非を審理する司法プロセスに入ることを決めた。中国の在カナダ大使館は審理入りに「極めて不満であり、断固反対する」との声明を出した。
カナダは昨年12月、バンクーバーで飛行機を乗り換えようとした孟氏を逮捕。孟氏は保釈されたが、出国は禁じられている。一方、米司法省は1月28日、米国のイラン制裁をくぐり抜けるために米金融機関にうその説明をしたなどとして、孟氏を詐欺罪などで起訴し、カナダに正式に引き渡しを求めていた。
カナダ司法省はこの要請を受け、米側から提供された証拠をもとに、引き渡しをめぐる司法プロセスに入るかどうかを検討。カナダで同様の行為をおこなった場合に禁錮1年以上の罪にあたる場合に審理入りが認められるが、今回のケースはこうした条件が満たされていると判断した。
孟氏は6日にカナダ西部のブリティッシュコロンビア州最高裁に出廷する予定だ。この場で審理入りが告知され、具体的な審理開始期日が決まるという。
中国は孟氏の逮捕後、シンクタンクの職員らカナダ人2人を拘束するなどして、カナダ側に圧力をかけてきた。在カナダ大使館はこの日の声明でも「これは単なる司法案件ではなく、中国のハイテク企業に対する政治的迫害」と強調。「カナダ側は引き渡し要請を拒み、孟氏を即時釈放すべきだ」と訴え、今後の推移を見守るとした。
カナダ政府は事件について「司法の独立」を強調し、政治的な介入を否定してきた。ただ、トランプ米大統領は米中貿易交渉がまとまれば華為に関する訴追を取り下げる可能性を繰り返し示唆している。
華為は2日、孟氏の弁護団名義で「米国の訴えは政治的な動機によるものだ」とするコメントを発表した。訴追に干渉する可能性を示唆したトランプ氏の発言に触れ、「こうした状況でカナダ司法相が相変わらず米国への引き渡しの是非を審理する司法プロセスに入ることを決めたことに失望している」とした。
その上で、孟氏に対する米国の訴えは「カナダでは犯罪を構成することはまったくない」と主張。「孟氏はいかなる不当行為もしておらず、米国による起訴と引き渡しは司法手続きの乱用だ」として、引き渡し阻止を求めた。(ニューヨーク=鵜飼啓、北京=福田直之)