2月27、28両日に開催された米朝首脳会談で、27日夜の夕食会の席上、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が寧辺(ヨンビョン)の核施設の廃棄の「見返り」として制裁解除を主張したのに対し、トランプ米大統領が寧辺のみならずすべての核施設の廃棄を主張し、意見が対立していたことがわかった。米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)が2日、複数の出席者の話として伝えた。
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同紙によると、トランプ氏がすべての核施設を廃棄するよう求めたのに対し、正恩氏は米朝両国の間でまだ十分な信頼関係が構築されていないことを理由に異を唱えたという。
トランプ氏の提案は、両首脳間で大きなディール(取引)を成立させるためのものだった。トランプ氏は「恋に落ちた」と自賛するほど正恩氏と自身の関係を良好と考えており、正恩氏が提案を受け入れると考えていたとみられる。
しかし、米情報機関は北朝鮮が核を放棄する可能性は低いと分析しており、ニューヨーク・タイムズ紙によると、ボルトン米大統領補佐官やポンペオ米国務長官ら大統領側近は、トランプ氏の提案が実現する可能性は「ほぼゼロ」と考えていたという。
一方、寧辺の核施設の廃棄の見返りとして5件の国連制裁の解除を求めた正恩氏の提案は、米国のビーガン北朝鮮政策特別代表と北朝鮮の金赫哲(キムヒョクチョル)対米特別代表による実務者協議でも赫哲氏が主張し、ビーガン氏が難色を示していたものだ。
ポンペオ氏は事前にトランプ氏に対し、「寧辺核施設の廃棄だけで合意すれば正恩氏からだまされたと見られることになる」と忠告していたという。正恩氏はトランプ氏ならば自身の提案を受け入れると考えていたとみられ、正恩氏にとってもトランプ氏からの「逆提案」は誤算だったとみられる。
また、同紙によると、トランプ氏は今回の首脳会談で、昨年6月のシンガポールでの首脳会談以来、懸案となっていた米朝双方の「非核化」の定義の食い違いについて、米側による「非核化」の定義を記載した文書を正恩氏に手渡したという。(ワシントン=園田耕司)