10カ国のシンクタンクの研究者らが政治や経済の国際的な課題を話し合う「東京会議」(言論NPO主催)が3日、都内のホテルであった。3回目の今回は、自由貿易や技術の分野における米国と中国の対立を主題に意見を交わした。
会議には、日米英仏などG7各国やインドなど計10カ国からシンクタンクの研究者らが集まった。
議論は、既存の国際秩序に対抗する動きを見せる中国に、世界がどう関与していくべきかに集中した。
米レーガン政権時代に商務審議官として対日貿易交渉を担った米経済戦略研究所のクライド・プレストウィッツ所長は「中国が改革開放を進めた1980年代以降、中国は自由貿易体制に加わるという期待が我々にあった。だが、共産党の支配のもと国家による経済関与の度合いは増している」と批判。米国内で最近、国際社会からの中国の「切り離し(デカップリング)」に関する議論を耳にすることが増えたと指摘した。
仏国際関係研究所で中国担当のアリス・エクマン氏は、デカップリングに関す議論を踏まえ、「朝鮮半島に対する考え方や政治体制といった点で米中は大きな違いがあり、世界は分極化した」と指摘しつつ、「グローバル化で相互関係が強まる現代では、(世界の国々が)米中のどちらの側につくのか、明確な立ち位置を示すのは難しい」とも述べた。
国家間が相互に結びつく状況を踏まえ、6月のG20サミットで議長国を務める日本財務省の浅川雅嗣財務官は、世界貿易機関(WTO)の協定違反が指摘される中国を念頭に、「国有企業に補助金を出した時はWTOに通報しなければならないのに、守っていない国がある」と指摘。ただ、「中国は少子高齢化を迎えるなどしており、確実に経済が減速する。中国も我々と同じ経済システムに組み入れられている。中国が抱える問題を解決しなければ、将来的に世界経済にショックが起きる」と加えた。6月のG20サミットではWTO改革も主要な議題になるという。
議論後に出された声明では、8月にフランスであるG7サミットに向け、G7が「自由と多国間主義、民主主義という規範を尊重し、それらの実現のための牽引(けんいん)役」として結束するよう要請。自由貿易の堅持や所得格差の是正、WTO改革、多様性の尊重などに向けてG7が協力し、中国に働きかけるよう提言した。(飯島健太)