重要な判例となった民事訴訟などの記録が東京地裁で大量に廃棄された問題で、学者やジャーナリストで作る研究会が5日、最高裁に請願を出した。今後は第三者を含めた諮問委員会を設け、記録を廃棄する前に、永久保存の是非を議論すべきだと求めた。最高裁総務局は「内容を検討の上、適切に対応してまいりたい」とコメントした。
全国の裁判所は最高裁の内部規程により、訴訟記録のうち「史料的価値が高いもの」などの特別保存(永久保存)を義務づけられている。ところが、東京地裁では2011年までこの制度が使われず、憲法の生存権の意味合いが争われた「朝日訴訟」など著名事件の記録が捨てられていた。ジャーナリストの江川紹子氏や青山学院大学の塚原英治(えいじ)教授、龍谷大学の福島至(いたる)教授が加わる研究会は「憲法判断がなされた著名事件の記録があっさり処分されていたことは衝撃」としたうえで、「諮問委員会で定期的に議論していれば、歴史的に重要な事件の記録が廃棄されてしまう事態は避けられたであろう」と訴えている。
研究会のメンバーはこの日、東京地裁にも請願書を提出。同地裁で保存期限が満了した後も特別保存に付されず、廃棄もされていない約270件の記録について「廃棄を保留したうえで、第三者の意見を聞くべきだ」と求めた。(編集委員・奥山俊宏)