私的な損失を日産自動車に付け替えるなどしたとして会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された同社の前会長カルロス・ゴーン被告(64)の弁護人が6日、保釈保証金10億円を東京地裁に納付した。昨年11月の逮捕から108日目で、勾留先の東京拘置所から保釈される見通しだ。
カルロス・ゴーン もたらした光と影
ゴーン前会長は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪と特別背任の罪で起訴されており、保釈金の内訳は金商法違反事件で2億円、特別背任事件で8億円。
東京地裁は5日、ゴーン前会長の保釈を認める決定を出した。東京地検は同日、決定を不服として準抗告を申し立てたが、地裁が同日深夜に退けた。弁護側は準抗告の棄却後に保釈金を納める方針だったため、納付手続きは6日にずれ込んでいた。
ゴーン前会長は保釈後、東京都内の制限住居で暮らすことになる。地裁は出入り口に監視カメラを設置することを保釈の条件としており、インターネットの使用や事件関係者との接触、海外渡航なども禁じている。パソコンが使えるのは弁護人の事務所に限られ、携帯電話も使用が制限されるという。弁護人の弘中惇一郎弁護士は前会長の会見も検討しているとしており、今後の前会長の発言が注目される。
ゴーン前会長は1月、有報の虚偽記載と特別背任の罪で追起訴された。弁護人だった大鶴基成弁護士は2度にわたって保釈請求したが、地裁が却下。新しく弁護人に就いた弘中氏らが2月28日に3回目の保釈請求をしていた。
地裁は2回目の保釈請求までは、前会長が関係者と口裏合わせをするなどして証拠を隠滅する恐れがあると判断していたが、今回は弁護側が示した保釈条件を評価し、証拠隠滅の恐れは少ないと判断したとみられる。前会長は一貫して起訴内容を否認しており、東京地検特捜部の否認事件で、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが始まる前に保釈されるのは異例となる。