2月のある土曜日。人気の少ない東京・木場のりそなホールディングス(HD)本社内の一室は、十数人の女性たちの熱気に満ちていた。
「襟は丸襟でいいですか」。内(うち)麻衣さん(38)がホワイトボードにTシャツの絵を描きながら聞くと、「いくらかかるかな」「2週間でできるって」……。
社員間のコミュニケーションを密にするため、専用アプリの構想を1年かけて議論してきた。1カ月後には東和浩社長らに提言する。その場で着るおそろいのTシャツについて話し合っていたのだ。
彼女たちは「りそなウーマンズカウンシル」の第9期メンバーだ。2005年にできた経営直轄の諮問機関で、女性社員だけで構成する。女性の働きやすさに必要なものを議論し、経営陣に提言する。
これまでに育児や介護のための短時間勤務や、結婚・出産・育児で退職した社員の再雇用制度など、多くの施策をカウンシルが提言し、実現させてきた。保守的な銀行業界で、女性だけの意見をベースに経営方針が決まるしくみはめずらしい。
きっかけは業界を揺るがせたある「事件」だった。
りそな銀行、巨額の公的資金を受け入れ、実質国有化へ――。
長く続いた金融危機の果てに起きた03年の「りそなショック」に誘発され、行く末を悲観した男性行員が大量に離職していった。
そんなとき、細谷英二さん(故…