大阪市西成区の女性准看護師(当時29)に対する強盗殺人罪などに問われた日系ブラジル人のオーイシ・ケティ・ユリ被告(34)に対する裁判員裁判の第7回公判が7日、大阪地裁(上岡哲生裁判長)であり、検察側は無期懲役を求刑した。弁護側は最終弁論で、犯行当時の被告は心神耗弱状態だったとして減刑を求めた。判決は14日。
准看護師殺害を認め「心神耗弱」主張 元同級生の初公判
検察側は論告で、被告が2014年、親密になった中国人女性と中国で同居しようと、小中学校の同級生だった岡田里香さんになりすましてパスポートを取るために岡田さんを刺殺した動機について「身勝手さは際立っている」と指摘。突然別人格が現れる「解離性同一性障害」が犯行に影響したとする弁護側の主張は「量刑を左右するほどの事情ではない」と述べた。
そのうえで、「急所の胸などを多数回刺し、岡田さんの苦痛や恐怖心などは計り知れない。看護師を夢見て何の落ち度もない岡田さんから、命、将来の夢や希望を奪った」と述べた。
一方、弁護側は最終弁論で、鑑定医の証言などから被告は犯行時は「大胆で冷酷な性格」の別人格に行動を支配され、「激しい怒りも恨みもないのに55カ所も刺した」と説明。行動を制御する能力が著しく失われていたなどと主張した。被告は最終意見陳述で、しばらく沈黙した後に「悪いことをしたとは思っていないし、悪いことをしたという事実はないと思っています」などと述べた。
6日には遺族の意見陳述があり、岡田さんの母親は「娘は被告の理不尽な欲望のために残酷に殺害され、荷物のように宅配便で送られてトランクルームに放置された。自分の命で罪を償ってほしい」と厳刑を求めた。
オーイシ被告は14年5月、岡田さん名義で不正取得した旅券を使って上海に渡り、拘束された。17年1月に中国当局から引き渡され、大阪府警が逮捕した。(畑宗太郎、大部俊哉)