政情不安と大規模停電が続いている南米ベネズエラの反政権派リーダーで、暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長は11日、国会を緊急招集し、「国家警戒態勢」を発令した。7日夕に発生し、完全復旧に至っていない大規模停電への対応が理由。軍に発電施設の警備などを命じるなどした。だが、実権はマドゥロ大統領が掌握しており、実効性は不透明だ。
グアイド氏は、国会に送付した文書で、7日夕から続く大規模停電で、すでに死者が出るなど、国民の生命が危険にさらされていると指摘。憲法に基づき、30日間の「国家警戒態勢」を発令するとした。軍に対し、電力会社の職員が手薄な施設の警備を指示する一方、電力不足やマドゥロ政権に対する抗議行動を起こす市民を妨害しないよう命じた。また、国内の燃料を確保する必要があるとし、マドゥロ政権が続けてきたキューバへの燃料輸送を止めることも命じた。
憲法の規定では「国家警戒態勢」を発令すると、憲法で認められた権利を制限できる。だが、グアイド氏は国際条約である「自由権規約」や憲法で定められた権利を停止することはないとした。
大規模停電は発生から100時間を経過しているが、完全復旧には至っていない。現地NGOの調査によると、10日午後9時時点で、新生児6人を含む21人が電力不足が原因で死亡を確認したという。このほか、現地メディアは、人工透析ができずに死亡した患者がいると報じており、死者数はさらに増える可能性がある。ポンプが動かないことから水道が使えなくなり、飲み水を求めて、どぶ川から水をくむ市民の姿も報じられている。
マドゥロ政権は、停電の原因について「米国からのサイバー攻撃」と主張している。(サンパウロ=岡田玄)